NATO首脳会議に参加した岸田首相の思いとは

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 ドイツでG7サミットが開催された直後、スペインのマドリードでは北大西洋条約機構(NATO)首脳会議が開催された。今回の会議では、ロシアによるウクライナ侵攻を受けて加盟申請を行ったフィンランドとスウェーデンの加盟が確実となり、今後NATOは32ヶ国体制となる。また、ロシアを安全保障上の「最大で直接的な脅威」と位置づけ、NATOは今後東欧を中心に防衛力を大幅に増強することを確認した。また、覇権主義的な動きを強める中国にも初めて言及し、中国の威圧的な行動に強い懸念を示した。さらに、今回のNATO首脳会議には日本、韓国、オーストラリア、ニュージーランドのアジア太平洋国家も参加し、NATOが同4ヶ国と国際秩序の維持で連携を深めることも明記した。

◆中ロとの関係悪化による経済的影響
 岸田政権は発足以降、ロシアによるウクライナ侵攻もあって、中国やロシアへの対抗姿勢を歴代政権以上に鮮明にしている。ロシアに対しては制裁措置を積極的に発動し、それについてはバイデン大統領も強く評価した。中国に対しても台湾問題や人権、海洋覇権などについてたびたび懸念を示し、米国など同盟国や友好国とそれについて共有を深めている。よって、今回岸田首相がG7からNATO首脳会議に参加した背景には中ロに対する強い危機感があったはずだ。

 一方、このような姿勢を日本が長期的に維持すれば、中国やロシアとの経済関係が冷え込むことになる。ロシアに対しては日本が率先して制裁を強化しているが、最大の貿易相手国である中国については岸田政権の姿勢によって関係が悪化し、中国ビジネスにおける利益が縮小するとの懸念も経済界から聞かれる。おそらく、岸田首相も今回のNATO首脳会議参加などによって中ロとの関係が冷え込み、それによって日本経済が一定の影響を受ける可能性は承知済みだろう。

Text by 和田大樹