ロシアは化学兵器を使用するのか? 使用の前兆を指摘する声も

黒煙の上がるリビウ上空(3月26日)|Nariman El-Mofty / AP Photo

 ウクライナ軍の激しい抵抗を受け、ロシア側が化学兵器の投入に踏み切る可能性が懸念されている。アメリカのバイデン大統領は、ロシアがウクライナで化学兵器を使用した場合、NATOは「対応する可能性がある」と述べた。ロシアは化学兵器を保持しており、使用するか否かはプーチン大統領の意思次第との見方もある。

◆使用はロシア側の意思次第
 オーストラリア国立大学のデイヴィッド・カルディコット博士(救急医療・毒物学)は、シドニー・モーニング・ヘラルド紙(3月24日。以下「SMH」)に対し、「彼ら(ロシア側)は化学戦争を仕掛ける能力を間違いなくもっている」とし、「問題は彼らにその意志があるかだ。もし一線を越えれば、NATOの介入を意味する」との見解を示した。一部には、東部化学工場での一件をもって、ロシアが化学兵器を仕掛ける前兆であるとする見方がある。オーストラリア国立大学のチャールズ・ミラー博士(国際関係)は同紙に対し、ロシアが何かをするとき、敵方の類似の行動に難癖をつけることから始めることは常套手段だと指摘している。

 問題の一件は、ウクライナ東部・スムイの街で3月21日、ロシア軍の攻撃を受けた化学工場がアンモニア漏れを起こしたものだ。ロシア側はこれをウクライナ過激派の仕業だと主張する、いわゆる偽旗作戦を発動した。英科学誌のニュー・サイエンティスト(3月22日)は、化学工場での事件が「化学兵器を用いずに化学汚染を引き起こすこと、および自国が化学薬品を使用する口実を設けること、この両方の手段でロシアがウクライナとの衝突をエスカレートさせるという、ひとつの手法を示唆している」と述べ、化学兵器使用の前触れの可能性があると分析している。

Text by 青葉やまと