「弱腰」ウイグル人権決議に見る、日中関係の舵取りの難しさ

Toru Hanai / Pool Photo via AP

 米中対立もあり日中関係の行方が懸念されるなか、衆議院の本会議では1日、中国の新疆ウイグル自治区やチベット、香港での人権侵害に懸念を表明する決議が与野党の賛成多数で可決された。しかし、決議の中では中国を名指しすることは避けられ、「人権侵害」という言葉が「人権状況」に変更され、「非難」という言葉も盛り込まれなかった。また、人権侵害について、「ただちに中止するよう強く求める」は「説明責任を果たすよう強く求める」に変更された。一方、中国外務省は早速これに強く反発し、「日本の決議は中国の内政に乱暴に干渉し、極めて劣悪だ」と強い不快感を示している。

◆非難するべきだとする意見と避けるべきだとする意見
 今回の決議について国内からも「弱腰だ」「中国を強く非難するべきだ」「だからなめられる」といった意見も多数上がっている。確かにこれまでの北京政府の新疆ウイグル自治区やチベット、香港への弾圧、統制強化を注視し、対中国で欧米諸国と足並みを揃える日本政府はそうするべきだとの意見が上がるのは自然な流れだろう。なかには、日本政府は米中対立のなかで中立的な立場を維持したいのかもしれないが、それは中途半端であり、中立は最大の孤立を招くと危惧する声も聞かれる。

 一方で、世論調査をすれば少数派になるかもしれないが、中国との友好関係を重視する政治家層、「最大の貿易相手国」中国を重視するビジネス層がいることも事実だ。仮に、非難や侵害という言葉を前面に押し出した場合、中国側からエコノミック・ステイトクラフト(国家が自らの戦略的目標を追求するために、軍事的ではなく経済的な手段によって他国に対して圧力をかけること)として何かしらの対抗措置が講じられる可能性が高まるだろう。そういった層からすると、人権問題で懸念があることは理解してもやはり目先にある利害関係から、できるだけ関係に亀裂が生じるようなことは避けたいというのが本音だろう。

Text by 和田大樹