艦艇が大隅海峡も通過 欧米をけん制する中露、その思惑とは

ロシア海軍ウダロイⅠ級駆逐艦|sivapornphaiboon1983 / Shutterstock.com

 昨今、中国とロシアが世界各地で軍事的な挑発行為を見せている。防衛省によると、中国とロシア海軍の艦艇5隻ずつの計10隻が24日、鹿児島県の大隅海峡を通過し、東シナ海に侵入したという。同省はこれまでにない中露の動きとして警戒と監視を強めている。中露両国にはどういった思惑があるのだろうか。

◆欧米をけん制する中露
 中露両国は大隅海峡を通過する10日前の14日から4日間の日程で、極東ウラジオストク沖で戦闘機による射撃や潜水艦による探査など合同軍事演習を実施した。その後、18日には北海道の奥尻島南西およそ110キロの日本海で中露艦艇が航行するのが確認され、その後、津軽海峡から太平洋へ抜け、千葉県犬吠埼、伊豆諸島、高知県足摺岬沖を通過し、24日に大隅海峡を通過した。要は、ほぼ日本本土を一周したことになる。

 その背景には、欧米をけん制する目的がある。最近はカナダ海軍が米軍とともに台湾海峡を通過し、オーストラリアやフランスの要人が相次いで台湾を訪問するなど米国以外の欧米各国が台湾への関与を強めている。今年に入ってからは、英国やフランス、ドイツの海軍がインド太平洋へのプレゼンスを示すだけでなく、クアッドやオーカスなど多国間協力も加速している。これらはこれまでには見られなかったことであり、東シナ海や南シナ海を自らの庭と位置づける中国はかなり神経を尖らせている。主要国間の安全保障をめぐる情勢を考えれば、昨今の中露の動きは決して驚くものではない。

Text by 和田大樹