イスラエルとサウジアラビアが接近か バイデン政権で変化する中東情勢
バイデン氏は政権発足に向けて本格的に動き出した。すでに、外交の中心を担う国務長官にはオバマ政権で国務副長官を務めたブリンケン氏、国家情報長官にはヘインズ元CIA副長官などが指名されるなど、対外政策の進め方も少しずつわかってきた。バイデン政権の対外政策で最も注目されるのはいかに中国に対応していくのかだが、中東情勢も大きく変化する可能性がある。ここではバイデン政権下の中東政策、それがもたらす新たなリスクについて考えてみたい。
◆バイデン政権下で消える「トランプリスク」
トランプ政権は2015年のイラン核合意から一方的に離脱するだけでなく、イランへ懲罰的ともいえる経済制裁を発動した。また、今年1月にはイラン革命防衛隊ソレイマニ司令官を米軍が殺害したことから、米イランの間で軍事的緊張が高まり、一触即発の事態となった。しかし、トランプ政権下のこの緊張はバイデン政権下では消えることだろう。バイデン氏はイラン核合意に復帰するとみられ、今後どのようにイラン核問題が進展していくかは別として、ロウハニ大統領もバイデン政権が国際協調路線に戻り、懲罰的な経済制裁が解除され対米関係が改善されることを望んでいる。
◆トランプ再選を望んでいたイスラエルとサウジアラビア
だが、トランプリスクの消滅によって中東に不安定要素がなくなるわけではない。米国のイラン核合意への復帰をイスラエルやサウジアラビアはよく思わない。イスラエルのネタニヤフ首相は、大統領選で勝利したバイデン氏を祝福するメッセージを発信したが、本音としてはトランプ大統領の再選の方が都合よく、いまはバイデン政権がどうイスラエルと向き合ってくるかを注視している。バイデン氏が以前からパレスチナ問題を重視する姿勢を示していることから、そこへの懸念も拭いきれないことだろう。
- 1
- 2