IS新指導者サルビ氏、“理想郷”奪還を呼びかけるのか?
ちなみに、各地の過激派がISに忠誠を誓う背景には、類似する外国のテロ組織と関係を構築できる、外国から資金・情報を入手できる、現地政府や市民に対してより強い脅威を与えられる、などがあるが、その一方でISを嫌って一部が離反したり、内部で権力闘争や分裂が生じたりすることもあり、忠誠を誓うことはテロ組織にとって大きな賭けでもある。
いずれにせよ、バグダディ容疑者の前任者がリーダーとして発表されたときも今回と同じように名前だけ先に発表され、その後本人の顔やプロフィールが明らかになったことから、今後このサルビ容疑者の全貌が明らかになる可能性は高い。
◆サルビ容疑者が主導するIS
おそらく、サルビ容疑者本人の声明が出た後、各地の支持組織や信憑者たちは一斉に反応を示すに違いない。そして、それによってIS指導者の捕獲、殺害作戦は本格的に再開されるだろう。すでに水面下では始まっているかもしれないが、それはISの新たなスタートとなる。
しかし、バグダディ容疑者のようなカリスマ性を得られるかは未知数であり、最大で英国領土に匹敵すると言われたISの支配地域はもう存在しない。サルビ容疑者にあるのは、「Physical caliphate(領域支配のIS)」ではなく、「Cyber caliphate(サイバー空間上のIS)」である。バグダディ時代の理想郷「Physical caliphate」を取り戻す作戦は不可能に近い。もしかすると、サルビ容疑者はバグダディ時代のISをノスタルジアとして、支持者たちに呼びかけてくるのかもしれない。
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