不満を爆発させる中東の若者、一帯一路の中国とぶつかる日は来るのか?

Khalid Mohammed / AP Photo

◆若者たちの不満、怒りの矛先は?
 SNSでこういった地元の若者たちのメッセージや動画を日々見ていると、不満の根底にあるのは、やはり、「突然仕事がなくなり、行き場を失った」「一部の政治家が利権を握っている。倒さないといけない」「なぜ俺は苦しんでいるのにあいつは裕福なんだ」といった声だ。要は、何かしらの政治的イデオロギーに染まっているとか、宗教的改革を求めているとか、そんな難しいことがあるわけではなく、どの国の若者も持っていそうな日常的な不満だ。よって、目の前にある攻撃対象である政府、もしくは政府を支援する国家・組織に怒りの矛先が向かうのだ。
 
◆中東における中国にとっての脅威とは?
 今後、中東地域では堅調に人口が増加するが、こういった暴力的な若者の姿を見ることはさらに多くなるかもしれない。そのようななか、中国は中東への関与を着実に進めている。習近平氏は9月下旬、辞任したアブドルマハディ首相と北京で会談し、中国が進める経済圏構想「一帯一路」にイラクが新たに参加することで合意した。昨年の両国間の貿易額は300億ドルを超えるなど、近年両国の経済関係は深まっている。今後、イラク再建に向け、経済や社会インフラ、文化や治安など多方面での中国からの支援が加速するという。また、12月1日、イランのアラーグチー外務次官は北京で中国外交部の馬朝旭副部長と会談し、イラン核合意を完全かつ効果的に履行していくことで一致した。これは、中国が石油市場としてのイランとの安定的関係を重視している証だ。

 イラクの若者たちは、政府を支援する外国勢力も攻撃しているが、仮に中国が石油利権でいっそうイラクへの関与を強めれば、中国も暴力的な若者たちの標的になることだろう。イラクとイランで見られる現状を、北京はどう見ているのだろうか。

Text by 和田大樹