米空軍、マイクロ波兵器「フェイザー」を配備へ ドローン群を瞬時に壊滅
◆高エネルギーで瞬時に破壊
それでは、フェイザーはどのように機能するのだろうか? テレグラフ紙(9月25日)は、「輸送コンテナの上にレーザーアンテナを搭載したような外見」と紹介した上で、「手短に述べるならば高出力のエネルギー砲である」と総括している。高出力のマイクロ波を円すい状に放射するフェイザーは、既存のレーザーとは作用を異にする。レーザーが熱によりダメージをもたらすのに対し、マイクロ波を用いるフェイザーは高エネルギーによって電子回路を誤動作させ、あるいは回路そのものを破壊する。
瞬時に効果をもたらす点も大きな特徴だ。既存のレーザー兵器であればターゲットに一定時間照射し続ける必要があるが、フェイザーは1マイクロ秒以下の放射で威力を発揮する。レイセオン社はポピュラー・メカニクス誌に対し、「もしマイクロ波を目で見ることができるならば、(カメラの)ストロボライトにとてもよく似ているだろう」と説明し、照射時間の短さを強調している。加えて、広範囲に作用する点も大きなメリットだ。レーザよりも広範囲に放射されるマイクロ波兵器は、敵味方の区別なく撃墜してしまう欠点があるというのが従来の評価だった。しかしドローン群の脅威が顕著になるにつれ、瞬時に全機を一網打尽にするマイクロ波兵器の評価は見直されつつある。
◆高まるドローンの脅威
米国防総省がフェイザーの試験導入を急ぐ背景には、急速に高まるドローンの脅威がある。テレグラフ紙は比較的安価かつ入手が容易な点を上げ、ドローンが軍事大国に与える不安は高まりつつあると指摘する。爆発物を搭載して目標に向けて飛行させれば「急場しのぎの巡航ミサイルに早変わりする」と同紙は述べる。一昔前ならば一部のゲリラ戦術に用いられるのが関の山であったドローンは、いまや世界の軍隊の脅威となった。
今年9月にはサウジ石油施設へのドローン攻撃が発生しているが、フェイザーの開発はそれ以前から行われていた。国防総省とレイセオン社の間で調達交渉が進むなか、正式発表以前に件のドローン攻撃が発生してしまった形だ。しかし、ドローンの脅威を示す事例は、この一件だけではない。ポピュラー・メカニクス紙はイエメンのドローンの事件を上げ、サウジの一件を予見できるケースは過去に複数起きていると指摘する。イエメンの件では、爆発物を積載した大型ドローンにより約40名が死亡している。深刻な脅威となったドローンへの切り札として、フェイザーの試験配備の成り行きが関心を集めている。
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