技術革新と戦争(2) 求められる国家の倫理観

Ng Han Guan / AP Photo

◆求められる国家の倫理観
 このような情勢を踏まえ、筆者は一つのことを強く懸念している。当然ながら、技術革新は人類に利便性で恩恵を与える一方、リスクも生み出している。技術革新には第一に倫理性が求められなければならない。我々人類は、平和利用目的でダイナマイトや核を開発したはずだが、それが戦争に利用されたことで広島・長崎の悲劇を生むことになった。技術革新が進めば進むほど、それが戦争やテロに悪用されるリスクも高まる。

 それは誰もが脳裏に浮かべるだろう。しかし、近年の国際社会にあるのは、国際協調主義の衰退と国益第一主義の高揚である。大国を中心に、いかに技術革新で利害関係国に対して有利に立つか、これが前面に出ている。確かに、AI技術の危険性について専門家の間で議論されるようになったが、開発・競争の勢いを止めるほどには至っていない。

 技術革新における現在の状況は、地球温暖化をめぐる今日の状況と似ている。地球温暖化による影響は、世界のあらゆるところで見られる。このままの状況で進むなら、技術革新による影響もさらに表面化することだろう。国家の倫理観が強く求められる。

Text by 和田大樹