新型ICBM「東風41」、極超音速兵器「東風17」中国パレードでわかった驚きの軍事力

Ng Han Guan / AP Photo

◆驚異的進化 中国の新兵器にアメリカたじたじ?
 一方、豪マッコーリー大学のベイツ・ギル教授は、今回のパレードには、中国の軍事力のすごさを見せつけることで他国をけん制する意味もあったと見ている(ブルームバーグ)。

 軍事パレードを見たアメリカや同盟国が脅威を感じたのは間違いなく、とくにミサイルに注目が集まった。中国軍事専門家のアンドリュー・エリクソン氏は、今回初登場した大陸間弾道ミサイル、東風41(DF-41)に注目した。「中国の最新かつ最もパワフル、そして議論の余地のない最も進んだ核兵器システム」とし、対米抑止を念頭に設計配備されていると解説している(CBC)。ブルームバーグによれば、世界最長の射程距離のロケットの一つとされる。

 しかし、アメリカとアジアの同盟国にとって最も喫緊の心配とされるのは、より飛翔距離の短い非核ミサイルだとブルームバーグは指摘する。中国はこの15年でアメリカの西太平洋の基地のほとんどをカバーするために、発射台や兵器の増強を行ってきた。こういった中距離の地上ベースのミサイルは、ロシアとの中距離ミサイル全廃条約(INF)によりアメリカは保持できなくなっていた。これがトランプ大統領によるINFの破棄が一部で支持される理由だとブルームバーグは述べている。

 今回のパレードで登場した、極超音速技術を用いた東風17(DF-17)などは、弾道ミサイルの速さと巡航ミサイルの操縦性能を備えており、日本の防衛省が「ほかの兵器よりも迎撃が困難」と警戒している。ペンタゴンの幹部にいたっては、これに対する防衛手段はないと認めているという(CBC)。豪シンクタンク、ローウィー研究所のサム・ロゲビーン氏は、パレードに現れた中距離、準中距離ミサイルは中国の戦略の重要な要素だとし、これらの兵器によって、北アジアにおける軍事活動を非常に危険で高くつくものにしようという意図があると指摘している(ブルームバーグ)。

 アメリカは、中国の兵器の95%はINF条約に抵触するものだと見ている。条約破棄で、中国に対抗し同様のミサイルを再導入することに躍起になっており、アジアにそれを配備したいようだが、日豪は難色を示しているという。仮にどこかに配備したとしても、中国からの抵抗は必至だ。エスパー米国防長官のアジア訪問の際に、中国は、豪日韓のいずれかが配備を受け入れれば対抗策に苦しむことになる、と警告していた。同盟国への政治的経済的圧力が予想されるだけに、アメリカにとっては厳しい状況だ(ブルームバーグ)。

◆米を越すのは時間の問題?軍事費でも猛追
 学術ニュースサイト『カンバセーション』に寄稿した西オーストラリア大学のピーター・ロバートソン教授は、米中の軍事力の差は、予想以上に狭まってきているとする。現在アメリカはGDPの3.2%に当たる6490億ドル(約69兆円)を軍事費に使っている。中国の軍事費はGDPの1.3%で1.7兆元(約25兆円)だから、アメリカの40%ほどでしかない。

 しかし、購買力平価(ある国である価格で買える商品が他国ならいくらで買えるかを示す交換レート)に基づくと、中国の軍事費はすでに4550億ドル(約49兆円)となり、実にアメリカの75%にまで迫ってきていると同氏は指摘する。アメリカはいまでも世界一の軍事大国だが、我々が思うほどではないとしている。

Text by 山川 真智子