中東諸国と関係を深める中国 緊迫のイラン情勢の陰で
◆緊密化する中国とアラブの盟主
中国はアラブの盟主であるサウジアラビアとの結びつきも強めている。習近平氏は今年2月、北京を訪問したサウジアラビアのムハンマド皇太子と会談し、経済分野での連携をさらに強化することで一致した。具体的には、中国の一帯一路構想と、ムハンマド皇太子が主導する2030年までにサウジを近代国家にするための国家目標「ビジョン2030」とのコラボレーションを緊密にし、中国が製油所の建設などでサウジアラムコに100億ドルを投資することなどが決定された。今年になり、中国にとってサウジアラビアは最大の石油供給国となった。
また、サウジアラビアは9月下旬、日本や中国など約50ヶ国に対する観光ビザの発給を開始した。ムハンマド皇太子のもと、サウジアラビアは「脱石油」政策と経済の多角化を進めており、観光業を含み、今後いっそう両国の経済関係が深まることが予想される。
◆中国の中東接近は何を生じさせるか
一帯一路構想によって中国と中東諸国の経済的な結びつきが強まれば、今後何が生じるのだろうか。
一つに、中国の中東接近によって、中東地域における米中摩擦が増えるかもしれない。中東は地理的にアジア、欧州、アフリカの真ん中に位置し、中国が進めるシルクロード経済ベルト上にある。中国による展開が進めば進むほど、米中摩擦の可能性は高まるだろう。中国は、表立って米国との政治的対立は避けようとするだろうが、今後の中東情勢において大きなステークホルダーになるかもしれない。
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