中東諸国と関係を深める中国 緊迫のイラン情勢の陰で

アブドルマハディ首相と習近平主席|Lintao Zhang / Pool Photo via AP

 先月14日、サウジアラビア東部にある同国最大の国営石油企業「サウジアラムコ」の石油施設2ヶ所が、複数のドローンやミサイルによる攻撃を受けた。そして一つの習慣のように、サウジアラビアや米国がイランを非難し、イランが証拠はないとして関与を否定し、親イランのイエメンのシーア派組織「フーシ」が犯行声明を出した(今回の事件はフーシ派ではないとの指摘も多い)。

 中東地域では、フーシ派によるサウジアラビア領内への攻撃、ホルムズ海峡でのタンカー攻撃などが相次いでいるが、その後の関係各国の勢力図は近年まったく変わらない。一方、近年中国と中東諸国の経済関係は大きく動き出している。中国は、イラン情勢で緊張が高まるなか、着実に自らの戦略を推し進めている。

◆一帯一路への参加を表明したイラク
 中国の習近平国家主席は9月下旬、北京を訪問していたイラクのアブドルマハディ首相と会談し、緊張が続くイラン情勢について、「関係当事国は行動を自制し、平和的に問題を解決しなければならず、必要に応じて中国はすべての関係各国と協議を行う用意がある」と表明した。

 また、アブドルマハディ首相は、中国が進める経済圏構想「一帯一路」に新たに参加することを表明した。昨年の両国間の貿易額は300億ドルを超えるなど、近年両国間の経済関係は深まっている。今後、イラク再建に向け、経済や社会インフラ、文化や治安など多方面での中国からの支援が加速するという。

 イラクというと、冷戦以降、常に米国による戦争の最前線だった。政治的な米国の関与のイメージがどうしても強いが、今後、中国とイラクの関係が米国の政策にどう影響を与えるのかが注目される。

Text by 和田大樹