サウジ攻撃:考えるべきイランの「関与・支援」の意味、フーシ派の動機
◆イランの関与、支援の具体的意味
イランは、イエメンのフーシ派だけでなく、レバノンのヒズボラ(Hizballah)、バーレーンのアル・アシュタール旅団(Al Ashtar brigades)、イラクのハラカット・アル・ヌジャバ(Harakat al nujaba)やバドル旅団(Badr Organization)、シリアのLiwa Fatemiyoun(アフガニスタン発祥)などのシーア派組織を財政的・軍事的に支援し、シーア派民兵を現地へ送り込むなどしている。その財政規模は各組織によって違うものの、数百万ドルから数十億ドルとも言われ、フーシ派には約10万人、ヒズボラには2万5000人~3万人、イラク・シリアのシーア派民兵には10万人〜20万人がそれぞれ参加しているとされる。
イランがフーシ派を支援していると言われるが、それが事実であることは間違いないだろう。しかし、イランの支援の程度は、各組織によって違い、フーシ派は、ヒズボラやシリア・イラクのシーア派民兵(シーア派組織)ほどイランから強い影響を受けていない。フーシ派はもともとイエメン土着の組織で、旧イエメン軍の兵士も加わっており、おそらく昔のイエメン内戦で使用された一部のミサイルもフーシ派に流れていると考えられる。イランがオマーン沖を通って大量の巡航ミサイルなどを大々的に運搬できるものだろうか。
繰り返されるサウジ領内への攻撃でも、それを決断したのはあくまでもフーシ派指導部であって、テヘラン指導部が毎回の攻撃でフーシ派と連絡を取り合い、命令を下しているとは考えにくい。イランの関与は側面的なものに限られるだろう。サウジアラビア主導の有志連合によるフーシ派への攻撃が止まないなか、イランが支援を強化し、近年イランとフーシ派の関係が深まったともいわれる。
◆重要なのはフーシ派の動機
現在のイラン情勢の核心は、「イランの関与、支援の具体的意味」だ。しかし、この全貌が解明される可能性はきわめて低く、まずイランがそれに協力する可能性はないに等しい。よって、不透明なままイラン情勢は良くも悪くも進む。しかし、フーシ派の動機にサウジアラビアと米国はもっと耳を傾けるべきだろう。フーシ派はイエメン土着の組織であり、サウジアラビアがイエメンへの空爆を停止すれば、これまでの報復は止めるとも宣言している。フーシ派を対イランの最前線だけで捉えるべきではない。彼らにとって、地域大国の覇権争いより重要なのは、自らの存続とイエメンの安定のはずだ。
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