G7、目立った意見の相違 首脳宣言見送りもトランプ氏「素晴らしい結束」

AP Photo / Francois Mori

 中国、貿易、ロシア、イランなどの問題にまつわる、トランプ大統領と世界のリーダーたちの意見の相違は気にしないでおこう。フランスで開かれた先進7ヶ国首脳会議(G7サミット)でトランプ大統領が引き出したメッセージは「結束」だった。事実、「完璧な」結束だった。

 主だった先進民主国家のリーダーたちが会合を重ねたサミットの期間中、トランプ大統領は重要な問題における意見の相違を棚に上げ、「ラブフェスト(訳注:若者が日常で直面している課題について討論するアメリカのイベント)」のような行事だと評した。

 フランス・ビアリッツで開かれた2日間のサミット閉幕後、8月27日の記者会見の中で、「主要7ヶ国が集まった今回の会合を一言で表すとすれば、結束だ」とトランプ大統領は述べている。「素晴らしい結束だった。よくやった」

 トランプ大統領の奇行によって過去2回のサミットを台無しにされたことを受け、他国の首脳は今年、悪い印象が表に出ないように協力することにした。

 最初に、議長国フランスのマクロン大統領は、サミット終了時に毎年発表されていた長文の首脳宣言を見送る方針を定めた。首脳宣言では通常、各国首脳がサミットの議題に関して合意に達した内容を列挙し、問題への対処法に関する道筋を示す。

 トランプ大統領は2017年、最終文書に盛り込む気候変動問題の文言をめぐって会議を紛糾させた。翌年には、議長国カナダのトルドー首相に見くびられたと不満を表明し、首脳宣言への署名を拒否した。

「マクロン大統領が首脳宣言を出すに値しないと決めたのは、そのような背景があったからだと思う」とカナダに拠点を置く国際ガバナンスイノベーションセンターの著名な研究員、トーマス・ベルネス氏は指摘している。その代わり、「G7のリーダーには堅い結束があり、積極的な議論が交わされたことを強調したい」という内容で始まる成果文書が発表された。

 マクロン大統領はさらに、見苦しい意見の相違にはこだわらないように努め、「会合の後、G7のリーダーたちが真に求めたのは、前向きな共同メッセージを発信することだった」と述べている。「この2日間、リーダー全員がトランプ大統領と手を取り合いつつ協力した」ことを強調している。

 ただ、こうした明るい話はあったにせよ、他国の経済にも悪影響を与えつつある中国との紛争を終わらせるようにと、トランプ大統領は圧力を受けた。

 米中紛争により、「世界経済に好ましくない不確実性が生み出されている」とマクロン大統領は述べている。

 ロシアを巡る意見の相違も公になった。トランプ大統領は昨年に続き、ロシアを首脳会合メンバーに復帰させるべきだと主張した。プーチン大統領が2014年にクリミア半島を併合したことを受け、当時のG8はロシアを除名している。

 トランプ大統領のロシアに対する姿勢が本国で問題視されているが、同氏は26日、議題となっている多くの問題にロシアが関わっているとして、蚊帳の外に置くのではなくメンバーに迎えるべきと主張した。

 カナダのトルドー首相はロシアのサミット復帰には個人的に反対している。「2014年にメンバーから外される原因になった行動をロシアはまだ改めていない。したがって、G7への復帰は認められない」と記者会見で述べている。

 フランス、カナダ、イタリア、アメリカ以外のG7メンバーはイギリス、ドイツ、日本である。

 安倍首相が要望したにもかかわらず、トランプ大統領は「北朝鮮による短距離弾道ミサイルの実験が国連の安保理決議に違反している」という首相の主張を採用しようとしなかった。

 大統領は首相と「考えが一致している」と述べたものの、多くの国でミサイル実験がなされているとして、北朝鮮の金正恩氏による実験を擁護しているようにみえた。「好むと好まざるとにかかわらず、我々はミサイルのある世界にいる」と大統領はコメントしている。

 トランプ大統領はさらに、イラン問題で「素晴らしい結束」があったとしているが、おおむねイランに対する長年の見解を繰り返しただけで、それ以外はほとんど共有されなかった。

 アメリカは2015年、イランが核開発を制限する見返りに米欧諸国が経済制裁を緩和するイラン核合意から離脱した。この件に関して、フランス、ドイツその他G7諸国はトランプ大統領に不満を抱いている。

 各国リーダーが達した最大の結論は、イランが「核兵器を保有することはできない」ことだとトランプ大統領は言う。何十年にわたり世界が求めている問題解決の突破口からは程遠いものだ。

 アメリカが拘束したイスラム国(IS)の戦闘員を母国のヨーロッパに送還しようとする取り組みについて聞かれたトランプ大統領は、ドイツのメルケル首相との会合の中で、G7のリーダーは「素晴らしい会談をした」と述べている。しかし、全般的な合意には達していないことを認めた。

「アメリカが兵士たちを連れて行くのは公平ではない。彼らはアメリカ出身ではないのだから」と不満を口にしている。

 マクロン大統領は歴史を振り返ることによって、意見の相違を穏便にするという難題に巧妙に対処した。大統領は、イランとアメリカの間の仲裁者としてのフランスの役割を正当化するため、フランス元大統領で第二次世界大戦の英雄であったシャルル・ド・ゴール氏による発言を引用した。

「政治とは、割れた窓ガラスをつなげる作業だ」

By DARLENE SUPERVILLE and ZEKE MILLER Associated Press
Translated by Conyac

Text by AP