核合意が危機にも……英国とイランの緊張が変える湾岸情勢
イラン問題がより複雑化しつつある。スペイン南部と接する英国領ジブラルタル沖で7月4日、シリアへ向かっていたとされるイランのタンカーが英当局に拿捕されたが、その報復として、イラン革命防衛隊は19日、ホルムズ海峡を航行している英国のタンカー「ステナ・インペロ」を拿捕した。翌日、革命防衛隊は特殊部隊がヘリコプターからタンカーに舞い降り、同タンカーを拿捕する動画を公開した。ジブラルタルでの拿捕以降、イランと英国の緊張は高まり、イラン最高指導者のハメネイ氏も断固たる措置をとると英国に警告していた。
◆高まるトランプ政権の対イラン圧力
最近の状況はいままでとは違う。一段階緊張が高まったといえるかもしれない。英国とイランの緊張を、トランプ政権は好都合な条件が整っていると思っていることだろう。周知のように、トランプ政権は発足当時から「イラン嫌い」を強調し、2015年核合意からの一方的離脱や経済制裁とイランへの圧力を強化してきた。核合意からの離脱によって、当初は米国の孤立が一部で叫ばれ、欧米の間に大きな亀裂が生じることになったが、今回の英イラン対立は、これまでのイラン核合意をめぐる国家間関係に変化を生じさせる可能性がある。トランプ政権も、そうなることを望んでいることだろう。
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