ウイグル問題、37ヶ国が中国擁護……国際的非難かわす中国の2つの戦略

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◆テロ問題を巧みに利用する中国
 次に、テロ問題の国内的利用である。9.11以降、世界では米国主導の対テロ戦争が激しくなり、アルカイダなどイスラム過激派をどう根絶するかが国際社会の最大の関心事になった。そのようななか、ウイグル族の過激派メンバーで構成される「東トルキスタン・イスラム運動(ETIM)」や「トルキスタン・イスラム党(TIP)」の動向にも注目が集まり、アルカイダとの関係性が一部で指摘された。また、近年では、ISに参加するため中国人数百人がシリアへ渡った、TIPがシリア北部に拠点を築いている、などの指摘がなされている。

 このようななか、中国は国内のウイグル問題をグローバルなテロ問題と関連づけ、それを政治的に強くアピールすることで、諸外国からの非難をかわせる環境を作り出した。ウイグル問題で中国を非難したい米国としても、同問題がアルカイダやIS絡みの問題となると、自国の安全保障に関わる問題となり、大きなジレンマを感じることになる。

 今回、中国を擁護する立場を取った国々は、北京と同じように少数派イスラム教徒、またテロとイスラム過激派の問題を抱えている。たとえば、ロシアはカフカス地方のイスラム過激派、エジプトはシナイ半島のIS系組織、シリアはIS残党勢力やTIP、アルジェリアは「マグレブ諸国のアルカイダ(AQIM)」などの問題を抱えており、中国はそういった各国の事情を理解していることだろう。こういった政治、経済面での中国の存在感が高まってくると、それに多大な影響を受ける国々は、ウイグル問題やチベット問題などの人権問題に対しいっそう目をつぶるようになると考えられる。

Text by 和田大樹