空洞化する多国間主義とG20の存在意義

Susan Walsh / AP Photo

◆G7の存在意義を問う声
 そして、G20には中国やインドように、今後の世界経済で大きな影響力を持つ国々が参加する一方、G7の存在意義を問う声が多く聞かれるようになった。今後の世界経済に照らすと、世界に占めるG7全体のシェアは低下する一方だ。G20とG7は決して対立軸にあるものではないが、G20が国際社会で影響力を持つようになれば、G7の存在感はさらに薄まる可能性がある。少なくとも、現在、G7の参加国である米国と英仏独などとの間には溝が生じているが、それは中国やロシア、イランなどといった国々に政治的な隙を与えている。

◆非競争的な場所であるべきG20
 最後にG20の存在意義である。今回のサミット後も、G20はそもそも必要なのか、といった報道もみられた。確かに、今回のG20では多国間主義的な首脳宣言も採択されたが、2日間で首脳たちの頭のなかにあったのは、各国の首脳たちと一対一の議論を積み重ね、自分たちに有利な環境を作り出そうという国益第一主義だったといえる。メディアの注目も、米中首脳会談やその後の板門店での米朝会談にほぼ集中した。

 しかし、それでもG20の存在意義は大きい。近年、「インド・太平洋構想」では、中国を意識した競争的側面と協調的側面が議論されるが、G20を米国側(日本や欧州、オーストラリアなど)と中国側(とりあえずロシアも)の競争的な場にしてはならない。対立する米中が主導する世界において、G20が米中の争いの舞台になった場合、中国がもう参加しないとする措置を取れば、国際社会の緊張はいっそう高まる。G20は米中の指導者が定期的に顔を合わすことのできる貴重な場であり、米中対立によって生じるあらゆるリスクを防止、もしくは低減させる可能性を秘めたフォーラムでもある。

Text by 和田大樹