ロシア唯一の空母「アドミラル・クズネツォフ」廃艦か 浮きドック沈没、改修できず
◆代替ドックなく
英タイムズ紙(4月7日)は、今回使用されていたドックはPD-50と呼ばれるもので、浮きドックとしては世界最大級の設備だと伝えている。浮きドックとは、沿岸に設置される乾ドックと同等の作業環境を海面上で実現する設備を指す。船のようなドックにバラスト水を積載することで一旦水中に沈み込ませ、凹型の船体に改修対象の船が入渠した後、バラスト水を排水することで再び水面上に浮上させる仕組みだ。
停電によりPD-50は水没しており、その代替設備を探すことは容易ではない。ロシアは型式の近いPD-41を保有しているが、現在アドミラル・クズネツォフがフィンランドとの国境に近いロシア西部に停泊しているのに対し、PD-41はロシア東部に配備されている。距離がありすぎることから、代替利用は現実的ではないと同紙は指摘する。
それでは、乾ドックでの改修は可能だろうか? 実はロシア西部には、空母の大規模改修に対応する乾ドックは存在しない。西部最後の大型乾ドックは2018年10月に閉鎖されているため、モスクワ近海で大型船の修理を行える施設は存在しない、と米技術誌のポピュラーメカニクスは解説している。さらに悪いことに、事故当時アドミラル・クズネツォフは改修のためプロペラを外した状態にあった。このため現在自力での航行は不可能で、復帰には別の浮きドックが必須となるが、手配の目処が立たない状況だ。
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