ナイロビ・テロ事件とグローバル・ジハード アルカイダとISの動き
ケニアの首都ナイロビで16日、5つ星ホテル「ディシットD2」や外資系企業が入る複合施設を狙ったテロ事件が発生し、これまでに21人が死亡した。事件後、ソマリアを拠点とし、国際テロ組織アルカイダに忠誠を表明するイスラム過激派組織「アルシャバブ(Al Shabaab)」が犯行声明を出した。
犠牲者には米国人や英国人など多くの外国人が含まれたが、幸いにも邦人は巻き込まれなかった。しかし、アルシャバブは欧米人など外国人が多く集まる場所を意図的に狙っており、邦人が犠牲になってもまったく不思議ではないテロ事件だった。同様のテロ事件は、今後も中東やアフリカ、欧米など各地で発生することが考えられる。
◆グローバル・ジハードにおけるアルカイダ
この事件は、9.11同時多発テロ事件以降、国際社会で注目されるようになったグローバル・ジハード運動の視点から考えると、どのような意味があるのだろうか。
2014年以降にシリアとイラクで台頭したイスラム国(IS)は、現在は衰退傾向にある。2014~15年の最盛期にかけて、その支配領域はシリアとイラクで英国領土の面積に匹敵するまで拡大したというが、現在はその1%にも満たないまでに縮小している。その関連組織は依然として各地域に存在するものの、組織力と広報宣伝力の衰退は顕著といえる。昨今、ISはシリア北部マンビジで米軍部隊を狙った自爆テロを実行したが、今でもISは死んでいないとアピールする狙いがあったのではないかとも思われる(以前ほどではないが、ISは現在でもシリアとイラクでテロ事件を起こしている)。
一方、ISと対立軸にあるアルカイダは近年、ISが弱体化するにつれ、自らの存在力、ブランドを強くアピールするようになり、グローバル・ジハード運動の主導権をISから奪還しようとしている。指導者のアイマン・ザワヒリは、ISの全盛期だった2014年から15年の間に、ほぼ1年間何も声明を出さなかった時期があったが、去年1月以降、その音声メッセージは15回を数える。ハムザ・ビンラディン(オサマ・ビンラディンの息子)の声明も増加しており、米国やイスラエルへの攻撃を呼び掛けている。また、ザワヒリは生き残るIS戦闘員やIS支持者たちにアルカイダに加わることを求める姿勢も見せている。
16日の事件で、アルシャバブは犯行声明のなかで、「トランプ政権によるイスラエル・エルサレムの首都容認への報復であり、ザワヒリ指導者からの指示に従った」と言及している。今後のグローバル・ジハード運動においては、生き残るISネットワークとともに、復活を目指すアルカイダの動きも注視していく必要がある。今回の事件は、我々にそれを示唆しているのかもしれない。