訪韓観光客に復活の兆し THAAD報復措置解除で中国人急増

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 韓国の高高度防衛ミサイル(THAAD、サード)配備に対する中国の報復措置が昨年11月より段階的に解除されてから、中国人観光客が戻りつつある。韓国観光公社が発表した「2018年7月韓国観光統計」によると、7月の訪韓外国人の数は、前年同月比24.4%増の125万4833人となった。このうち中国人訪韓客は41万337人で45.9%増加(同)した。

◆団体旅行禁止が解除
 昨年3月のTHAAD配備問題をきっかけに訪韓中国人数は激減していた。中国当局が韓国への団体旅行を禁止したことを主な理由に、昨年の観光収支は過去最大となる137億4920万ドルの赤字を記録した。

 しかし中国当局は昨年11月に北京市と山東省からの観光客に限り韓国団体観光旅行を許可し、今年5月には解除地域を武漢市および湖北省まで広げ、8月には上海を追加した。当初、旅行禁止措置は「中国国民の民意によるもの」との立場を表明していたが、一連の解除の動きで当局主導の制裁だったことをかえって強調した格好だ。

 ただ、THAADに敷地を提供したロッテに対する制裁は継続中だ。運営するロッテホテルおよびロッテ免税店の利用禁止、団体観光客用のチャータークルーズの利用禁止、オンライン広告の禁止などは引き続き行われている。

◆日本人観光客も急増
 一方、訪韓日本人数も好調だ。同月の日本人訪韓客は前年同月比35.1%増となる23万512人を記録した。若年層を中心に近距離の海外旅行需要が増大し、朝鮮半島の融和ムードが影響したとされる。

 また台湾からは、15.4%増となる9万7696人が韓国を訪れた。夏休み期間の家族旅行需要の増加や企業のインセンティブ団体誘致が功を奏したと見られている。このほか国籍別伸び率は、ベトナム(46.9%)、タイ(35.8%)、ロシア(23.4%)などが2桁の訪韓客の増加率を見せた。

◆変化する中国人の観光スタイル
 韓国のインバウンド市場は、これまで中国人観光客に偏っていたが、日本、その他のアジア、中東など他の国籍の観光客の誘致にも積極的に乗り出したこともあり、国籍が多様化している。

 また中国人観光客のトレンドも変わりつつある。中国観光研究院の発表した「2017年 中国人の海外旅行ビッグデータ報告書」によると、団体観光や個人の自由旅行に続いて、カスタム旅行が人気を集めているという。

 韓国観光業界の関係者は、「中国の解除措置の一つ一つに、韓国が敏感に反応するから、中国は大したないことも韓国を締め付けるカードに書き込もうとする。一喜一憂する必要はない」とした(朝鮮日報)。今後は個人の中国人旅行者の争奪戦となりそうだ。

Text by 古久澤直樹