米中貿易戦争の解決は「日本に学べ」 米中メディアが持ち出す80年代の日米貿易摩擦
◆日本と中国は「別の生き物」
同教授は、背後でロビー活動を展開した米国の農業・工業界と保守系政治家たちの「保護主義的感情」が米国の対日貿易政策を突き動かした原動力だったのは間違いないと、現在のトランプ政権と当時のレーガン政権が抱える背景に共通点を見出している。ただし、米識者の多くは、だからといって、今の中国が当時の日本と同じ運命を辿るとは思っていないようだ。
レーガン政権下で商務省審議官として「ジャパン・バッシング」の先鋒に立った経済学者のクライド・プレストウィッツ氏は、「中国は(日本とは)違う生き物だ」と、ウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)にコメントしている。WSJは「日本は一度も米国製品に関税をかけるといった報復はしなかった」のとは対照的に、中国は「トランプ政権が中国製品に500億ドルの関税をかけると脅した24時間以内に、500億ドル分のアメリカ製品を攻撃対象とするリストを発表した」と書く。
アメリカは、1980年代当時、「スーパー301条」(貿易相手国の不公正な貿易慣行、過剰関税障壁が交渉によって解決しない場合、その国からの輸入品に対する関税を引き上げるなどの報復措置を取る法律)を日本の他にインドにも適用し、保護された保険市場を開放するよう求めた。これに対し、インドは「インドの政策をアメリカのために決めることはない」と強く反発し、アメリカは身を引いた。WSJは、1980年代の貿易摩擦と対比するのなら、今の中国の態度は日本よりもインドにずっと近いと指摘する。
◆中国メディアも「日本に学べ」
このまま米中両国が強硬路線を貫けば、日本を含む世界経済を巻き込んだ勝者なき潰し合いになってしまうかもしれない。中国とて、それは避けたいところだろう。国営新華社通信は、米中貿易戦争の行く末を「今こそ日本に学ぶべきこと」という切り口で分析している。
同記事は、日本経済は1990年代以後下降線を辿ったものの、戦後全体を通して見れば「基本的には再生を果たした」と評価。近年も日本の民間企業が海外投資と生産能力の海外移転に活路を見出し、「アメリカの保護貿易主義を相殺しようとしている」点に着目している。その好例として、トヨタがアメリカで220億ドルの投資をして生産拠点をアメリカに作り、13万6000人を現地雇用したことを挙げる。そして、こうした努力によって、日本は「貿易戦争のリスクを削ぎ、海外でのブランド価値を高めている」としている。
モールドクータス教授は、これまでの中国の成長モデルを「海外の技術をコピーし、低賃金労働と組み合わせる」という発展途上段階のものだとしている。中国がそのステージから一歩先に進むことが、破滅的な経済戦争の回避につながる重要な要素となるのは間違いないだろう。「日本企業は、低価格によってシェアを拡大し、利益を上げているのではない。営業努力と高品質・ローコストを目指すことに情熱を注いでいる」——。日本の識者が新華社に語ったこのアドバイスが、習近平主席に響くことはあるのだろうか。
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