「日本は独裁を支持している」カンボジア総選挙への支援めぐり、現地などから非難の声
今月29日に行われるカンボジアの総選挙への支援を巡り、国際社会の動向に逆らった日本独自の路線が際立っている。同選挙では、内戦終結後33年間にわたって独裁的に政権の座についてきたフン・セン首相のカンボジア人民党の勝利が確定的。というのも、フン・セン政権が最大野党・カンボジア救国党(CNRP)を事実上解党し、選挙から締め出したからだ。アメリカとEUはこれでは民主的な選挙は望めないと支援を中止。国連もカンボジア国民に選挙をボイコットするよう呼びかけている。
この状況で選挙運営資金の提供などで支援を続けているのは、日本と中国だけだ。日本は、カンボジアへの経済的・政治的影響力を中国に独占されないため、「民主主義」という理念よりも実利を取る戦略に舵を切ったと言える。国際社会の非難を受けても揺るがないこの日本の動きに、海外メディア・識者からも注目が集まっている。
◆欧米の撤退と中国の進出の間で
フン・セン政権は、CNRPがアメリカの後ろ盾で政府を転覆させようとしている疑いがあるとして、昨年9月にケム・ソカ党首を逮捕。11月には、最高裁がCNRPに解党を命じた。CNRPは前回選挙で、与党・人民党の腐敗を批判し、格差是正やより豊かな生活の追求を訴えた結果、都市部の若年層を中心に支持を集め、44.46%の得票率を得るまでに躍進した。フン・セン政権はこれに危機感を持ち、今回の選挙に向け、無理やり国家反逆罪を適用してライバルを排除したと広く国際社会では認識されている。
これを受け、アメリカとEUはカンボジアの選挙支援から撤退。国連もこの選挙は「純粋ではない」と表現し、カンボジア政府にCNRPへの弾圧をやめるよう求めた。また、カンボジア国民には選挙のボイコットを呼びかけている。日本も西側諸国の一員としてこうした動きに追従するのがこれまでのパターンだったが、今回は違った。引き続き選挙への支援を表明し、カンボジア選挙管理委員会に対し、投票箱の設置資金などとして約750万ドルを提供。また、4月にはインフラ整備計画などを含む大規模融資協定を結んでいる。
日本は、内戦が終結した1992年以降、カンボジアに積極的に政府開発援助(ODA)を拠出。長く同国最大の開発援助国だった。それが、2010年に中国に抜かれ、相対的に影響力が低下。中国は今回の選挙でも、欧米が撤退するや、すかさず日本を上回る約1,100万ドル相当の車、オートバイ、ビデオ会議用機材、コンピューター、プリンターなどを選挙管理委員会に提供した。日本としてみれば、ここで欧米諸国とともにカンボジア選挙から身を引けば、これまで維持してきたカンボジアへの影響力を中国に独占されかねないという懸念がある。そこに強い危機感を抱いて援助の続行を決めたというのが、識者らの見方だ。
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