金正恩・北朝鮮への印象、南北会談後に大幅アップ 韓国の大学生 「可愛い」の声も
対話に向けて動き出した北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)・朝鮮労働党委員長に対する韓国人の印象が変わりつつある。韓国社会世論研究所らは5月、大学生を対象としたアンケート調査を行い、南北首脳会談前後で金委員長と北朝鮮に対する好感度が大幅に増加したと発表した。会談前に金委員長に対して肯定的と回答したのは4.7%にとどまっていたが、会談後は48.3%に増加した。
韓国世論の変化はこれだけではない。会談後の晩餐会で振る舞われた平壌冷麺に注目が集まり、韓国の飲食店では連日行列ができるほどの賑わいを見せているというのだ。だが、こうした世論の変わりぶりには「このようなムードはまだ適切でない」「若い世代は金委員長を芸能人か何かと勘違いしている」など、いぶかしむ声も聞かれた。韓国の若者は先の会談をどのように受け止めたのだろうか。
◆「肯定的」と答える学生、10倍以上に増加
アンケート調査は、私立・韓国国民大学の19〜21歳の学生106人を対象にオンラインで行われた。会談前、金委員長に対するイメージで「肯定的」と回答した学生は4.7%だったが、4月27日の初会談後には48.3%に増加した。一方、「否定的」との回答は会談前の87.7%から会談後25.8%と大幅に減少した。
また北朝鮮に対するイメージでは、会談前は19.8%が「肯定的」だったが、会談後は57.3%に増加。「否定的」とするのは66.1%から17.9%に減少した。
◆韓国の大学生、金委員長は「可愛い」
歴史的な南北会談で金委員長は、前の最高指導者のイメージとは異なり、積極的で活力に満ちた若い指導者像を演出することに成功したようだ。
会談前の調査では、金委員長に対する学生の主観的なイメージを見ると、「独裁者」「核」「残酷」「太り過ぎ」「暴力的」「予測不能」など否定的な表現がほとんどだった。しかし、会談後には「正直」「大胆」「若い」「ユーモアがある」「可愛い」「分別がある」「新しい」など肯定的なワードであふれたのだ。
調査を行った国民大学のイ・チャンヒョン教授は韓国世論の変化について、「今回の南北会談は国民が生放送で金委員長の姿を見ることができる初めての経験だった」とし、「歴史的イベントで過去の否定的な固定観念に新しい肯定的イメージが混ざった瞬間だ」と説明した。
これまで核実験やミサイル発射、拉致問題含む自国民・他国民に対する人権侵害など国際的な批判を受けている北朝鮮。60年以上引き裂かれた南北が平和に向かう姿勢は歓迎できるが、韓国世論が動かされているようにトップ同士の融和イメージばかり先行している感が拭えない。今後も北朝鮮の一挙手一投足に注目が集まりそうだ。