ロシアのハッカー、米の無人宇宙飛行機など機密情報を盗む 標的に罠メール
とりわけ彼らの関心の矛先となったのが、アメリカのスペースシャトルの小型版ともいえる、無人宇宙飛行機のX-37Bだ。
ロシアのドミトリー・ロゴジン副首相は、自国の宇宙計画が停滞している証拠として2015年5月のX-37B飛行を引き合いに出しており、「アメリカに後れをとっている」とロシアの議員らに警告した。
それから2週間も経たないうちに、ファンシーベアはボーイング社にいるX-37BプロジェクトのシニアエンジニアのGメールアカウントに侵入を企てた。
また、ハッカーはクラウドサービスで作業する人をも追跡した。クラウドサービスは共同作業者が現場にいなくともデータを共有して作業するためのコンピューターネットワークだが、時には機密データを扱うこともある。たとえば、ある時サイバースパイが、メラノックス・フェデラル・システムズの社員のGメールに侵入しようと試みた。同社は政府の高速ストレージネットワークやデータ分析、そしてクラウドコンピューティングを支援する。クライアントには、FBIやその他の諜報機関も含まれる。
AP通信の調べでは、今回標的とされた31名のうち、アメリカ政府から警告通知を受けたのはわずか1名だった。
今回のロシアによる行為に対し、FBIがどのような対応をとったのか、詳細は明らかにされていない。FBIのジリアン・スティックルス報道官は、標的とされた個人に対してその旨を通知する場合もある、と述べた。スティックルス氏は「FBIは、公共および民間部門のシステムへの潜在的な脅威を、すべて真剣に受け止めている」とメールで述べている。
しかし、この問題に詳しい関係者3名(現在の、そして旧政府官僚を含む)は、以前AP通信に対し、ファンシーベアのフィッシング行為について、1年以上前から把握していたと話している。
同事件における通知の有無に関する報道を受け、あるFBIの上級職員は「FBIは大量のハッキングの対応に苦慮していた」と話した。繊細な問題のため、これまで同氏には公の場でハッキング操作について語ることができなかったという。「問題は、山のようにいる標的を、我々が能力の限り、トリアージ(危険度に応じた選別)していくということだ」と彼は語った。
アメリカの国防総省のヘザー・バブ報道官は、「我々はサイバー脅威が進化していると認識し、軍関係者や民間人、そして契約要員向けの訓練および技術を常にアップデートしている」と語った。しかし、今回のハッキング行為についてのコメントはなかった。
アメリカの機密技術情報を保護するディフェンス・セキュリティ・サービスは、企業のコンピュータネットワーク保護に重点を置いている。
広報担当のシンシア・マックガバン氏はメールで「個人のメールアカウントの保護方法や、何かあった際の通知方法に関して介入することも、監視することもない」と述べた。
BY JEFF DONN, DESMOND BUTLER and RAPHAEL SATTER, Associated Press
Translated by isshi via Conyac
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