東グータの惨劇 シリア政権軍が空爆、一般市民に多数被害 たる爆弾も
いっこうに収束の気配を見せないシリア内戦において、また痛ましい悲劇が起こった。アサド政権が率いる政府軍が、反政府勢力が支配するダマスカス近郊の東グータ地区を爆撃し、多くの一般市民が犠牲になった。
◆ユニセフの「静かな」抗議
CNNが伝えるところによると、政府軍は今週はじめから東グータ地区の空爆を続けており、19日だけでも多くの子供を含む100人以上の一般市民が死亡している。こうした惨状に対し、ユニセフは即座に「シリアにおける戦争のただなかにいる子供たち:東グータ地区およびダマスカスにおける多くの子供の犠牲に関するレポート」と題された声明を発表した。その声明は、「殺された子供たち、その子供の母親、父親、そして子供たちが愛していたすべての人々を言い表す言葉など何ひとつない」という一文のあとは、10行にわたる空白行で埋められていた。
東グータ地区の住民はCNNの現地取材に対し、今回の政府軍の爆撃は、ロシアの支援を受けた反政府勢力壊滅作戦の序章であり、それを止めることはできないだろう、と話している。
◆空からはたる爆弾
中東情勢を専門に報道するニュースサイト『ミドル・イースト・アイ』は、東グータ地区現地の人々の生々しい証言を報じている。東グータ地区にいたカメラマンのオマル・アル‐ドゥマーニ氏は「東グータ地区にいたわれわれは、あらゆるタイプの武器の標的となっていました。激しい砲撃は市民と病院を狙っていました。東グータ地区にはもう攻撃から隠れる場所などありません」と話している。同じく東グータ地区の住民のエヤド・スレウェル氏は「わたしたち住民は、空爆や砲撃といったあらゆる種類の武器による攻撃にさらされました。彼らは、東グータ地区でたる爆弾も使い始めたのです」「わたしたちは生き残るために地下に隠れようとしています。しかし、たる爆弾が非常に気がかりです」と証言している。
エヤド氏を襲ったたる爆弾とは、円筒状の容器に石油や爆弾の破片を詰め込んで作られた爆弾のことで、ヘリコプターから転がし落として使う。この爆弾は数年にわたりシリア各地で使用され、とくに2016年の終わりのアレッポの戦いで使われ強い印象を残した。
◆一歩もひかない両者
こうしたシリア内戦の主導者たちの言葉を、オーストラリアのニュースサイト『news.com.au』は伝えている。反政府勢力の主流派は、今回の猛攻撃を大量虐殺あるいは戦争犯罪だと言って非難しており、国連が仲介する和平交渉に逆行するものだと抗議している。対して政府軍を支援するロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は、「現行の同意にしたがって、テロリズムとの戦いは何ものによっても制限されてはならない」と述べている。
今回のシリア政府とロシアによる無差別とも言える攻撃に関して、国際人権擁護団体アムネスティ・インターナショナルは戦争犯罪にあたると述べたことを同サイトの記事は報じている。そして、同団体のシリア調査団のひとりであるダイアナ・シーマン氏の次のような発言も伝えた。「ロシアの支援をうけたシリア政府は、意図的に東グータ地区の一般市民を標的にしています」「一般市民は6年間にわたり残虐に支配されているだけではなく、今まさに市民を殺したり深手を負わそうとする絶え間ない攻撃に日々さられています。こうしたことは政府軍による戦争犯罪の一端に過ぎません。そして6年間、国際社会はシリア政府が犯している人権侵害と戦争犯罪に何の罰も与えることなく放置しているのです」