止まらぬ北朝鮮、米国に残されたオプションは? 英紙が「核保有を認めるべき」とも
核実験を繰り返す北朝鮮に対し、トランプ政権は効果的な手を打てずに苦しんでいる。軍事行動をちらつかせつつも状況打開の道が見えずにいるが、海外紙はいくつか実行可能な戦略があるとする専門家らの見解を紹介している。なかには北朝鮮に対して核保有を認めるべきだとする思い切った意見も出ているようだ。
◆軍事圧力
アメリカへの挑発を重ねる北朝鮮への対応で、最も明確な手段は軍事力の行使だ。しかしこれには各紙とも慎重論を唱えている。ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、外交問題の専門家の間では、戦争か黙認かの選択肢しかないという見方が主流だと伝える。戦争になった場合、日韓に数万人規模の犠牲者が出る恐れがあるほか、米軍にも被害が出るとして、あくまで最終手段と考えるべきという立場だ。
戦争が有力な手段ではないとするのはガーディアン紙も同じで、開戦にはトランプ政権が現地の同盟国である日韓の協力を取り付ける必要があるとする。しかし国民が危険に晒されるため、両政府は断固拒否の立場を取るだろうとの予測だ。
さらに同紙は、一度武力を行使してしまえば、金正恩氏の術中にはまってしまうとも指摘する。アメリカが極めて危険な国であるという金氏の論理を肯定し、北朝鮮国内で金正恩氏の指導者としての立場を一層強固なものにするためだ。軍事圧力や武力行使の路線はオプションの1つだが、必ずしも最も有効な手段ではないと各紙は捉えているようだ。
◆中国との連携、または中国への二次制裁の発動
軍事以外では経済面でのアプローチがこれまで試されているが、明確な成果は出ていない。北朝鮮問題では中国の存在感が大きく、ガーディアン紙によると、中国の協力なしでは対処できないと複数の専門家が警告している。しかし、過去に中国は米韓の合同軍事演習の終了を条件に北朝鮮に核開発凍結を求める案を示したが、アメリカがこれを拒否している。
同紙では中国への別の関わり方として、北朝鮮と貿易を続ける中国への二次制裁の効果についても論じている。北の貿易の90%を占める中国への制裁の効果は大きいが、一方で中国はアメリカの最大の貿易相手国でもあるため、米中間に関税戦争が勃発すればアメリカ国民の生活への影響も甚大になる。
ニューヨーク・タイムズ紙も、中国への経済制裁でアメリカ自身が苦しむことになると危惧している。自動車部品やiPhoneなど取引品目は多岐にわたり、貿易額は年間6500億ドルに達する。北朝鮮に強い影響力を持ちながらアメリカと歩調を異にする中国だが、副作用の影響を考慮すると、安易に経済制裁を適用するわけにもいかないようだ。
◆食糧援助の停止などの手段も
アメリカに残されたカードは他にどのようなものがあるのだろうか。ウォール・ストリート・ジャーナル紙は現在北朝鮮を襲っている飢饉に注目し、食糧援助を断つことも方策の一つだと唱える。非人道的な手段ではあるが、北朝鮮では武力開発に資金を投じる影で国民の40%が栄養失調の状態にあり、政権を終わらせることが優先だと論じている。
ガーディアン紙は、北を核保有国として認めるべきという主張を紹介している。2003年にリビアのカダフィ大統領が核を放棄したが、10年も経たないうちに当人への反乱に欧米の軍隊が加担する結果となった。この事件を知る金正恩氏が核を手放すことはないだろうと専門家の多くは見ているようだ。「米中双方は北朝鮮に核保有国の地位を認め、平壌との関係を正常化する必要がある」という見解を同紙では伝えている。
北朝鮮のミサイルがアメリカ本土を射程に入れようというなか、アメリカ政府は実効性のある対応を示せずにいる。しかしまだ手立てはあると各紙は見ているようだ。