ミサイル・核実験で中国に圧力かける北朝鮮 中国は「切り札」切れず手詰まり
北朝鮮は3日、水爆実験に成功したと発表した。一連のミサイル・核実験の目的について、アメリカ本土にも届く核ミサイルの開発と言われているが、中国に圧力をかける狙いもあるとの報道が出ている。中国側は原油パイプラインの停止という切り札を切るに切れず、実質的な手詰まり状態との見方もある。
◆核実験でアメリカだけでなく中国への圧力を意図か?
海外各メディアは核実験のタイミングに注目しているようだ。ニューヨーク・タイムズ紙によると、今回の核実験はBRICS首脳会談が中国で行われるわずか数時間前というタイミングで実施された。
北朝鮮は5月にも弾道ミサイルを発射しているが、これは習氏が国際会議で一帯一路戦略に関する重要なスピーチを行う数時間前だったと同紙は指摘する。こうしたことから北朝鮮の核実験は中国への圧力を意図しているとの観測が広がっている。中国からアメリカに働きかけ、現在韓国に駐留している米軍を一部撤退させるほか、核兵器の保持を認めさせるシナリオのようだ。
ロサンゼルス・タイムズ紙(9月3日)も、2016年の核実験が中国の旧正月前夜に行われている点を指摘する。北朝鮮情勢に詳しい韓国の大学教授は、「アメリカを遠ざける為だけでなく、中国にもシグナルを発信するために(核とミサイルを)設計していた」と分析しているとのことだ。アメリカ本土が射程に入るかで注目を集めているミサイルだが、隣国への圧力の意味合いもあるようだ。
◆原油パイプラインを遮断できないのはなぜ?
習氏にとっては政治的に重要なタイミングで顔に泥を塗られたことになるが、中国が実際に打てる手は限られている。ニューヨーク・タイムズ紙は、中国が北朝鮮の原油の8割以上を供給していることを示した上で、パイプラインの停止には踏み切れないだろうと読む。原油停止で北朝鮮が政治崩壊に至った場合、朝鮮半島は韓国の支配が強くなる可能性が高い。親米派の韓国が米軍を中国との国境付近に駐留させる公算もあり、中国としては北朝鮮の体制崩壊は避けたい。
ガーディアン紙も原油の供給停止が北朝鮮に致命的となることを指摘し、地理的に近い場所で大量の難民が発生することを恐れて中国は供給をカットできずにいる、と見ている。
ウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)は、原油停止で北朝鮮が行動をエスカレートする危険性があり、これを中国が危惧していると解説している。各紙理由づけは異なるが、パイプラインの停止という切り札を持ちながら、それを活かせないのではないかという論旨は共通している。
◆ついに経済制裁を本格化
もどかしさを募らせる中国だが、今回の核実験を受けてついに動きを見せている。WSJによると、今回の核実験後、国連で決議された経済制裁の包括的な実施を発表している。
一見強硬な態度に翻ったようにも見えるが、ロサンゼルス・タイムズ紙は実際のところは朝鮮半島の安定を優先し、刺激したくないのが本音ではないかと分析する。中国国営メディアの報道はBRICSに重点を置き、核実験にはあまり触れていないようだ。また、「北朝鮮 核実験」という組み合わせも検閲対象となり、現在検索できない状態になっているという。
北朝鮮への対応を厳格化すべきだとする国際的な圧力もある中で、中国は北朝鮮の崩壊というリスクも抱える。ギリギリのバランスを探る駆け引きが続きそうだ。