台湾で同性婚を容認する判決、そして憂色を見せる中国本国のLGBTQ人権

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著:Meg Jing Zengクイーンズランド工科大学 PhD Candidate)

 「ここはスモッグだらけ、どうしたら虹なんて見えるのだろうか?」これは台湾の同性婚容認を受け、@Melodyのハンドルネームで中国のマイクロブロギングサイト「微博(Weibo)」に投稿されたコメントだ。

 5月24日、台湾の憲法裁判所にあたる、司法院大法官会議は、アジアで初めて同性婚を合法と認める判決を下した。これは、同地域のLGBTQコミュニティに一筋の光を与える判決だ。

 しかし、隣国の中国にいる7千万人のLGBTQは、このニュースを複雑な気持ちで受け取った。

 中国でも同性愛は1997年以降容認されており、2003年には同性婚の合法化を認めるための法案が初めて全国人民代表大会に提出された。法案は3度にわたって否決されたものの、婚姻の平等をめぐる闘いは他の活動家によって今も継続している。

 台湾海峡の向こうから届いたニュースに多くの人が歓喜する一方、中国でもっとも象徴的な同性愛者向けソーシャルメディアプラットフォームRela(热拉)が5月26日に閉鎖された。閉鎖に関して、中国当局からの公式説明は一切行われていない。

◆中国LGBTQコミュニティの怒り
 Relaが閉鎖されたことで、中国のLGBTQコミュニティに激しい怒りが広がった。

 ある微博ユーザー@momodaは次のようにコメントした:

 アプリが閉鎖されてから6日過ぎたが、家族を失った迷子のような気持ちが消えない。Relaがあったから、私は自分がレズビアンであることを恐れずに済んだし、他人から受け入れてもらえる、と感じることができた。今、再び世界が闇になってしまった。Relaが恋しい。

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RelaのInstagram画像

 かつては「The L」として知られていたRelaは、2012年に上海を拠点とするスタートアップが設立したもの。創業者Lu Lei氏は2016年のインタビューで、Relaは毎月150万人ものアクティブユーザーを抱えており、その10%が海外のユーザーだと話していた。

 Relaは、一般的に出会い系アプリだと言われているが、その存在は「レズビアンの恋愛のきっかけ」以上のものだ。たとえばRelaには、マッチング機能だけでなく、動画ストリーミングプラットフォームの要素も含まれている。そこでは特定のユーザーがライブ放送を行い、フォロワーと共有できる。

 また、Relaはメディアコンテンツプロバイダでもある。2015年からは、レスビアンをテーマにした短編映画やシチュエーションコメディを制作している。

 中国でも同性愛は禁止されていないものの、当局は新たなガイドラインにおいて、同性愛をテーマにしたテレビ番組の放映を禁じている。Relaの共同創設者Wu Wenquing氏は、同社が国内の検閲を避けるため、YouTube及び同社アプリ専用の動画を公開すると発表した。

Relaの短編映画のひとつ – Girls who talk to flowers(花に語りかける少女たち)(2016年)

 ユーザーにとって、中国でのRelaの成功は、同国でLGBTQの人々がある程度受け入れられるようになってきたということを意味していた。だからこそ、突然の閉鎖が大きな悲しみを呼んだのだ。

◆中国の同性結婚キャンペーン
 Relaは閉鎖したものの、学者や活動家はいずれも中国におけるLGBTQの人権問題について、楽観的な見方をしている。

 たとえば、社会学者の李銀河(Li Yinhe)氏や中国政治を研究するティモシー・ヒルデブラント(Timothy Hildebrandt)氏は、宗教機関の影響力を受けない中国社会では、欧米諸国と比較しても、同性婚合法化に対する文化的抵抗は比較的低いとの見解を示す。

 中国で、ミレニアル世代の影響力が高まるにつれ、社会の姿勢も変化していく。中国のLGBTQもまた、いっそう社会に向けて声高に主張するようになる。その一因となるのが、同国の情報技術が急速に発展していること、そして「ピンクマネー(LGBTQの購買力)」の台頭だ。

上海プライド 2016のプロモーション動画

 近年、ソーシャルメディアは同性婚を議論する場を提供してきた。2016年、微博で同性愛者向けに「家族からのプレッシャーに屈して偽装結婚をしないように」と奨励するソーシャルメディアキャンペーンが展開され、視聴登録数は150万件にのぼった。

 中国の市民の間で、婚姻の平等が議論されるようになった大きなきっかけが、同国の「同妻現象」だ。同妻というのは、ゲイの男性と結婚する女性を指す中国の言葉だ。

 2012年、四川大学のLuo Hongling教授(31歳)が自殺した。夫が同性愛者だとわかったことが理由だった。このニュースによって、LGBTQの人々が社会的なプレッシャーによって、異性との結婚を余儀なくされて現象が広く注目された。また、同性婚の必要性について公の議論が生まれるきっかけにもなった。

 最新の推計によると、中国には1600万人以上の同妻が存在しており、今は彼女らが同国の同性婚合法化を進める強力な一群として台頭している。

◆海峡を越えるプレッシャー
 台湾で同性婚を容認する新たな判決が出たことは、中国のLGBTQアクティビズムにとって重要な意味を持つ。同性婚支持派で、中国でもっとも発言力のある研究者のLi Yinhe氏は、最近おこなわれたインタビューで次のように指摘している:

 以前は、欧米諸国で同性婚が容認されている、という話をしても、反対派の人たちは、「欧米とは性的な文化が違うし、慣習も異なる」などと正当化していた。しかし、もし中国と同じ文化や民族性を共有する台湾で同性婚容認の判決が出れば、同性婚が中国社会でも受け入れられることが実証されることになる

 しかし、中国当局にとって、台湾の判決がもたらす圧力は社会的なものだけでなく、政治的な意味合いも持つ。国際社会において、中国は「一つの中国」という政策を固辞し、同地域での影響力を拡大している。この地域において、台湾が新たにLGBTQの人権をけん引する立場につくのは、とりわけ人権擁護に関して不審な点の多い中国のイメージダウンにつながる。

 中国国内では、台湾の民主的政治システムは混とんとし、機能不全であるとメディアによって報じられることが多い。

 蔡英文政権は、台湾の民主主義がうまく機能していることを実証している。市民の人権向上に関しては、特にそうだ。

 Rela閉鎖後に、@danyiが微博で次のようにコメントしている。「台湾は同性婚の権利を獲得し、中国本国は同性愛者向けアプリを失った。台湾が我々より優れていることに、初めて気がついた。」

This article was originally published on The Conversation. Read the original article.
Translated by isshi via Conyac

The Conversation

Text by The Conversation