南スーダン:飢饉で国民4割490万人が支援必要も……武器購入を継続する政府

 3年間に及ぶ内戦により、人々が飢餓に直面している南スーダン共和国。同国は、2011年にスーダン共和国から独立した、現在世界で最も新しい国家である。そんな南スーダンだが、外務省危険情報においては、全土に渡って最も高いレベル4「退避勧告」の対象に指定されている。つまり、世界でも極めて情勢が不安定で危険な国だということだ。

◆飢饉が発生
 国家成立三要件は、領域、人民、権力(主権)であるが、南スーダンではそのなかの「権力」が問題視されている。というのも、キール大統領(ディンカ族出身)とマシャール前副大統領(ヌエル族出身)が対立しており、それによって激しい民族間闘争が勃発しているのだ。

 政府軍と反政府軍の争いにより、国民は飢餓に喘いでいる。現状は厳しく、国連は2月20日、南スーダンで飢餓の中で最も深刻な『飢饉』が発生したことを宣言した。これは、2011年にソマリアで発生した干ばつ以来、6年ぶりのことであった。国連の発表によると、人口の40%を超える490万人が食糧、農業および栄養の分野で緊急の支援を必要としているという。

◆日本も支援
 グテーレス国連事務総長からの支援要請に応じた日本政府は、外務省を通じて3月14日に「中東・アフリカ地域における飢饉対策のための緊急無償資金協力」を発表した。これは、合計2,600万ドル(約29億9,000万円)を、南スーダン、ソマリア、ナイジェリア、エチオピア、イエメン、ケニアの6ヶ国に向ける、という内容の援助であった。

 南スーダンには日本だけでなく各国が支援活動を行っているにもかかわらず、なぜ事態が好転する兆しすら見られないのだろうか。

◆武器購入が優先
 その答えが内戦である。南スーダンでは、多国の援助を紛争のための軍需費として扱っているのだ。政府は国民の命より武器を優先している。このため援助が末端まで届かないのだ。国連の秘密報告書によると、飢饉の発生にもかかわらず、同国政府は歳出の多くを武器購入をはじめとする安全保障に費やしているという(AFP)。

 そこで国際社会としては南スーダンに対する人的支援を行いたいのだが、上述のように、南スーダンは極めて危険な状況下にある。これは、2011年のソマリアの干ばつで、人道支援機関の立ち入りが制限されたソマリア南部の状況と同様である。人的支援が行われるのは、ほんの限られたエリアに過ぎない。

◆世界で8億人が慢性的な飢え
 南スーダンを含む既述の6ヶ国だけでなく、世界全体で7億9,500万人が慢性的な飢えに苦しみ、1分ごとに11人の5歳未満児が死亡し、1時間ごとに33人の母親が亡くなっているという(人間開発報告書2015)。

 南スーダンの現状は、飽食暖衣の日本に生きる我々の学ぶべき世界の飢餓問題や、国際貢献の本質である(金銭的支援に限らない)人的支援の重要性を説いている。

Text by 宇田川詩織