“日本とは違う、現実的になれ” 2億7000万丁の銃を抱え揺れるアメリカ

 オレゴン州で1日に起きた銃乱射事件を受け、米国内で銃規制を求める声が高まっている。同様の事件がこれまで何度も起きてきたのに、抜本的な対策が打てないアメリカの実情を、米メディアが報じている。

◆簡単に購入できる銃
 アメリカ疾病管理予防センターによれば、2001年から2013年までの米国内における銃による死亡者は、他殺、事故、自殺を含め40万6,496人(10月3日付、CNN)。2011年の小型銃器に関する調査によれば、国内では約2億7000万丁の銃が所有されており、住民100人当たり89丁という計算になる(ウォール・ストリート・ジャーナル紙、以下WSJ)。

 6月19日付のCNNは、米社会に銃が広がる理由の一つとして、厳しい銃規制がないことを上げている。米国では銃はウォルマートなどのスーパーでも購入可能で、知人や家族から譲り受けることもできる。店頭で購入する場合、連邦政府のデータベースを使った身辺調査で、犯罪歴があるか、精神障がい者かどうかを調べるが、簡易的なチェックで、引っかかる人も1%未満とほとんどいない。また、銃の展示会で購入すればチェックは不要だ。

 オバマ大統領を始め、銃規制を求める人々は、このような現状が銃による無差別大量殺人を助長していると考えている。2013年にオバマ大統領は他の議員とともに、すべての銃売買における身辺調査の実施など、より厳しい規制を提案したが、下院で否決されている(CNN)

◆銃を持つのも権利
 度重なる重大事件の発生にもかかわらず、アメリカでは銃規制の強化がすぐには進まないだろうと見るメディアが多い。

 ダラス・モーニング・ニュースは、銃を持つべきではない人に持たせない努力は必要だが、その議論は銃所持賛成派の怒りを買わずにはできないと説明する。同紙は多くの狂気による無差別な銃撃を避けるため、まずは深刻な精神疾患も購入時にチェックの対象とするという、テキサス州のジョン・コーニン上院議員の提案を支持。この案には、銃規制強化に強力に反対する全米ライフル協会も理解を示しており、完全な解決策とはならないが、ここから少しずつ議論を進めて行くべきだと述べている。

 政治ブロガーのケビン・ドラム氏は、ニュース・サイト『Mother Jones』で、2014年には銃所有の規制より、銃所有の権利を支持する人が上回ったという米ピュー・リサーチ・センターの調査を紹介。銃を買うことを難しくするべきという意見は多いが、現実には自衛としての銃の役割を認める人が多いことを指摘している。さらに同氏は、「最も大切な問題は」という最近のギャラップ調査での質問に、銃規制は22位にランクされ、それほど関心を持たれていないことも分かったとしている。銃規制反対派は、通常銃保持者で強い関心を持っているため、有権者の気持ちがそれを上回らないのであれば、規制強化は難しいとしている。

◆アメリカの現実を受け入れよ
 さらに、そもそも効果的な銃規制法案を、今から可決させること自体が困難だという意見もある。シンクタンクのケイトー研究所の研究者、トレバー・ブラス氏は、同団体のウェブサイトで「アメリカは、(銃所有がほぼない)日本ではない」と述べ、すでに3億丁近くの銃がある米社会の現実を受け入れるべきと主張。自動車事故や産業事故による死、プールでの溺死が避けられないと受け入れているように、アメリカ人はある程度の銃による暴力は避けられないと受け入れたというのが真実であると述べ、規制を強化すれば、銃による大量殺人は食い止められるというふりをするのはやめるべきだとしている。

 米メディアの報道を見る限り、すでに引き返すことができないほど、銃所持が広がっているアメリカ。銃社会から脱皮することは難しく、オレゴン州の事件のような悲劇は今後もなくなりそうにない。

Text by 山川 真智子