トルコ海岸の男児遺体に衝撃…難民問題で揺れる欧州 日本も無関係ではない?
中東、アフリカなどから流れ込む難民増加が、欧州で問題化している。1日夜にはユーロスターの線路に難民が侵入。パリ発ロンドン行きのユーロスターが、捜索のため英仏海峡トンネル(ユーロトンネル)の手前で停止を余儀なくされ、他の列車の利用者を含む4500人の足に影響が出た。難民を巡っては、EU内でも対応が分かれている。
◆ユーロトンネルの先には自由が
難民キャンプのあるフランスのカレーから、ユーロトンネルを渡ってイギリスに行こうとする難民は後を絶たない。英フィナンシャル・タイムズ紙(FT)によれば、ユーロトンネル運営会社の発表では、今年1月から7月までに3万7000人の渡英を試みた難民が捕らえられている。
英ガーディアン紙によれば、今までは多くの難民がトンネル入口近くから侵入し、イギリスに向かうトラックや列車で海峡を越える方法を取っていたらしい。しかし、フェンスの増設や警備員の増員でセキュリティが強化されたため、より内陸側から貨物列車や旅客列車を狙う難民が増えているという。今回のユーロスターの一件でも、難民が向かったのは、5キロ内陸側にある駅だった(ロイター)。
どんな手を使ってでも、目的地にたどり着きたいという難民たちだが、多くが悲惨な末路をたどっている。トルコの海岸には難民の死体が打ち上げられており、男児がうつぶせで横たわる写真は、1990年代のバルカン戦争以来のヨーロッパ最悪の難民危機の厳しい現実として、ネットを通じて広がった。地中海でも数千人の難民が溺死し、オーストリアではトラック内に放置された71人が息絶えているのが発見された(ロイター)。
◆EU内でも難民の対応には温度差
EUは深刻な危険から逃れようとする難民を受け入れる原則を掲げている。施策としては、亡命申請処理を容易にし、安全な国から来た者は送還するなど、本当に難民となっている者だけを加盟国に振り分けるための新政策を、近日発表すると約束している。しかし、欧州内でも、難民問題への考え方は、ますます二極化していると、ロイターは指摘する。
ドイツのサッカーファンは、「難民歓迎」の横断幕をサッカーの試合で披露。数十万人の難民受け入れを計画し、すでに次年度の福祉予算を増額している。ドイツには、先月だけで10万人を超える記録的数の亡命希望者が到着している(ロイター)。
一方、イギリスでは、新聞の人気コラムニストが難民を「ゴキブリ」と形容。イギリスは、自力で入国した約5000人に加え、国連と協力した制度のもと、今までに261人のシリア人難民を受け入れたに過ぎない。キャメロン首相は、「最も重要なのは(難民出身地域に)平和と安定をもたらすよう努めること」と述べ、単によりたくさんの難民を受け入れることが、問題の解決にはならないと述べている(ロイター)。
難民の通過国である、イタリア、ギリシャ、ハンガリーでも、対応に苦慮しており、EU加盟国からの援助の必要性を訴えている(ロイター)。
◆欧州の現実に学べ
法務省によれば、平成26年度に日本が難民として認定した者はわずか11人。難民とは認定されなかったが、在留が認められたものは110人で、実質上の受け入れである庇護数は121人だった。この数を見れば、欧州で起こっている難民問題はひとごとのようだが、実は日本でも、1975年の旧南ベトナム政権崩壊でボート・ピープルの流出が激化したことから、インドシナ難民を1万人以上受け入れたことがある。今後アジアのどこかで内戦などの異変が起これば、日本はまた、難民を受け入れることになるだろう。
難民とどのように共存していけばいいのか。欧州の現状から、我々日本人も学ぶべきではないか。