韓国人52%「朴大統領、中国抗日行事に参加すべき」 中国紙“参加しなければ将来損害”
中国は9月3日、「抗日戦争勝利」70年を記念する行事を北京で開催する。天安門広場では大規模な軍事パレードが行われる。中国は式典への参加を多くの国に呼びかけている。これまでのところ、ロシアやモンゴル、エジプト、チェコなどが参加を表明している。西側諸国の首脳は、5月にロシアで行われた対ドイツ戦勝70周年記念式典の時と同様、ほとんどが不参加だと見られている。そんな中、韓国の朴槿恵大統領は現在、参加を「慎重に検討」しているという。中国側の、朴大統領の参加への期待も大きいようだ。
◆反日アピールの場に?多くの西側諸国の首脳は出席を回避
ワシントン・ポスト紙(WP)によると、この行事での中国の狙いは、第2次世界大戦での中国の貢献と習近平国家主席の下での中国の国際的影響力の増大について、国際社会に念を押すことだという。
式典に出席すれば、中国による反日アピールに利用されるのではないか、との懸念があるために、各国首脳は式典への参加をためらっている、とさまざまなメディアが指摘している。
WPもその一つだ。式典は盛大に行われる予定で、準備も進められているが、果たしてその場に海外からの来客の姿はあるのか、と同紙は問うている。中国人民大学の時殷弘(Shi Yinhong)教授(国際関係学)は、この行事は歴史に関する不平と今日の不和の双方の面で、「少なくともある程度は、日本を標的にしたもの」だと語っている。
聯合ニュースは、中国は日本の戦争降伏を強調するとみられる軍事パレードに臨席するよう、世界各国の首脳を招待しているが、多くの西側諸国首脳は、このパレードが中国と日本との対立関係を大きく宣伝するかもしれないため、出席しそうもない、と伝える。
インドの英字週刊誌インディア・トゥデイは、インドもまた、軍事パレードへの臨席をめぐって、日中のはざまに立たされていることを伝えている。かねてより厄介な日中関係の中、この軍事パレードはますますデリケートな問題になっている、と同誌は語る。
同誌によると、中国政府は、招待した国からの代表者の地位の高さが、日中の緊張状態の中、その国が自分たちをどのように位置付けているかを示すものとなると見ているという。これに対して日本政府の見方は、中国はこの機会を利用して、戦時の残虐行為を強調し、現在の海洋での不和と日本の過去の軍国主義を結びつけ、地域の懸念をあおろうとしている、というものだという。インドの情報筋は、パレードに対する日本の懸念が、インドの意思決定の要因になるだろうと語ったそうである。
◆天安門事件のあった広場でのパレード。出席はイメージを悪くする?
かつて天安門広場では、民主化運動に対しての、武力による激しい弾圧があった。そこで行われる軍事パレードに臨席すれば政治上のイメージに傷がつきかねない、との旨をWPは述べている。これもまた、各国首脳が参加をためらう理由の一つである。
また同紙によると、EUのシュバイスグート駐中国大使は7月に、EU首脳の出席はありそうもないと考えていると語った。その際、軍事パレードを含んだ形で行われるこの行事が、果たして本当に和解のメッセージを発するものなのか、という懸念があると語っている。
◆中国との関係を重視する国にとっては、欠席にも難しい問題が
出席することに問題がある一方で、欠席すれば、中国の不興を買う恐れがある、とWPは語る。中国のパレードは、近隣国を厄介な状況に追いやるものとWPは語っており、中国との関係が深いアジアの国々が念頭に置かれているようだ。大多数の首脳にとって、(出欠は)容易な選択ではないように思われる、と同紙は語る。
米外交問題評議会の日本担当シニア・フェロー、シーラ・スミス氏は、「これは習主席にとって大きなパーティーであり、ある意味、中国の社交界デビューのパーティーだ」と同紙に語っている。「そこに来た客、来なかった客――この違いを中国は銘記するだろう」としている。
◆韓国・朴大統領の参加に関連する報道の錯綜
現在、まさにそういった悩みの渦中にあると見られているのが、韓国の朴槿恵大統領だ。朴大統領の記念行事出欠に関して、多くの報道が飛び交っている。
共同通信は9日、米政府当局者や外交筋の情報だとして、米オバマ政権が韓国側に出席を見合わせるよう事実上求めていることが8日に分かったと報じた。「朴槿恵大統領が出席すれば、米韓同盟に中国がくさびを打ち込んだとの誤ったメッセージになる」との懸念を伝達したという。
しかしこの報道について、韓国大統領府の報道官は10日、「事実でない」と否定した(朝鮮日報・11日)。また米国務省の報道官も、同じく10日、そのような要請をしたことはないと発表した。ホワイトハウスも同様に否定したという(中央日報・12日)。
その一方、中央日報(11日)は、「中国のある外交消息筋」の情報として、米国が朴大統領の代わりに駐中韓国大使の出席を韓国政府に勧めていたことが確認された、と報じた。
◆韓国が参加を考慮する事情とは
朴大統領の出席に関して、今のところ確実なのは、韓国大統領府の報道官が10日、「諸般の事情を考慮して慎重に検討している」と語ったことだ。すなわち、出席の可能性は排除されていない。
中央日報(11日)によると、韓国の世論調査機関による調査では、51.8%が大統領は出席すべきだと回答したという。出席すべきでないは20.6%だったとのことだ。中央日報の11日の社説は、米国の事前の了解を得ることを条件に、大統領は参加すべきだと主張した。その理由としては、「全体輸出の25.4%を占める最大貿易国の中国をむげにもできない」と、経済関係を第一の理由に挙げている。
WPは、朴大統領は中国指導部の日本への反感をいくらか共有しており、中国との外交を最優先事項にしている、と背景を説明する。
韓国紙ハンギョレは、朴大統領が出席すれば、政府にとって、韓国光復軍が中国で日本と戦った歴史を国際社会に広める機会となるかもしれない、と専門家が語ったと伝えた。光復軍は、中国で設立された韓国臨時政府の正規軍の役割を果たし、日本に対する軍事行動で中国政府と協同した、と同紙は説明している。
ただし、朴大統領の父親の朴正煕元大統領は戦争中、満州国軍の中尉として韓国臨時政府に反対の立場にいた。そのことが大統領府にとっての問題になりかねない、とも同紙は語っている。
◆中国からの期待も大きい
中国側からの、朴大統領の出席への期待は大きいようだ。中国は朴大統領の出席を要請し続けている。WPは、朴大統領が出席すれば、中国側にとって大きな得点になりそうだ、と語る。
韓国・延世大学校の韓中関係専門家ジョン・デラリー氏は、中国にとって朴大統領はおそらく最も見込みのある人物だろう、とWPに語っている。大統領が出席すれば「この行事は、国際的な威信がいくらか増す」かもしれない、と語っている。
中国共産党の機関紙「人民日報」の国際版である環球時報は、12日の論説で、朴大統領は参加すべきではないという米国の意向を前提として、「もし朴大統領がこの圧力に屈するなら、大統領は韓国の自主性を抑制する先例を作ることになる。このような状況がひとたび作り出されれば、韓国は将来、損害を被るだろう」と警告した。聯合ニュースが伝えた。さらに環球時報は、「中国人民は、この機会に朴大統領がどのような決断をするかに応じて、異なった感情を抱くであろう」とも述べている。