ギリシャ、ドイツに1.5兆円以上の「返済」要求 主張自体は認める欧州メディアも

 債務問題でEU諸国と争うギリシャは2月、支援継続と引き換えに厳しい緊縮策を求めるドイツに、ナチス時代の占領に対する賠償を主張し話題となった。ドイツの反発は大きいが、ギリシャの主張自体は容認するようなる欧州メディアもある。

◆ギリシャは以前に報告書を作成
 『ユーロニュース』によれば、ギリシャがドイツに求めているのは、第二次世界大戦中に起きた虐殺等の戦争犯罪に対する賠償と、ギリシャが被った直接的または間接的な経済的コストの賠償だ。独シュピーゲル誌は後者を問題にしており、具体的にはギリシャがドイツに「強制された融資」を示す。

 賠償問題は、ギリシャのチプラス首相が突然繰り出した話題のように見える。しかしシュピーゲル誌によれば、ギリシャは前政権時代の2012年に、賠償についての調査を行っている。報告書の中でギリシャ政府は、ドイツに賠償責任があると結論づけており、「強制された融資」に対しても補償を求めている。ただ、ドイツとの関係悪化を懸念し、当時のギリシャ政府は問題化を避けたようだ。

◆主張には妥当な根拠が
 シュピーゲル誌は報告書をもとに、融資の発端は1941年に遡ると説明する。当時、戦時国際法であるハーグ条約により、被占領国は占領国の軍隊の維持、物資補給などの支払いをすべきとされており、『占領費用』として、ドイツは1ヵ月あたり15億ドラクマ(当時のギリシャ通貨)をギリシャに要求した。しかし、ハーグ条約で禁じられていたにも関わらず、ドイツはギリシャから支払われた金をバルカン、ロシア、北アフリカといった別の前線で使用。結果として1941年の8月から12月までで、規定額を大きく上回る120億ドラクマがギリシャからドイツに支払われた。

 経済が悪化したギリシャは、すぐに『占領費用』の削減を要求する。1942年には、支払額は半分の7億5000万ドラクマに変更されたが、ヒットラーの副官たちは「無制限の額を融資という形態で」要求。そこで『占領費用』分を越えてドイツが領収した額は、「ギリシャ政府の貸し」となるという見解を、1942年にドイツ側が示した。この強制融資は実際の『占領費用』の10倍はあったとされ、融資である証拠として、ドイツが分割払いで返済していた記録も残っているという。ギリシャ側の計算によれば、現在の額に換算し、未払い金は、110億ユーロ(約1.5兆円)以上になるという(シュピーゲル誌)。

 アテネ在住のドイツ人歴史家、ハーゲン・フレイシャー氏は、「理性ある人なら、報告書を読めば、融資の存在は明らかで返済は終わっていないとわかるだろう」と主張。融資への賠償は戦時の不当行為への補償とは、性質の違うものだとシュピーゲル誌に話し、「借金は返すもの。たとえそれが友達同士でも」と言い切る。

◆ドイツの新しい支配
 『ユーロニュース』によれば、戦後東西に分かれたドイツは平和条約を締結できなかったため、1953年のロンドン債務協定で、国家賠償はドイツ統一まで延期すると定められた。しかし1990年の統一時の条約で、すべては解決されたというのがドイツの主張で、賠償に関する討議再開を拒んできたという。

 ロイターによれば、2015年の第1四半期、失業率の低下、原油安、ユーロ安に支えられ、ドイツ経済は好スタートを切った。今年も成長が続くことが期待されるドイツだが、ヨーロッパでは必ずしも好意的に捉えられてはいないようだ。

 英インディペンデント紙は、アテネのアクロポリスをバックにナチスの司令官とともに笑顔でポーズを取るメルケル首相がシュピーゲル誌の表紙になったと報道。EUや他の地域でのドイツの経済的支配を「第4帝国」に例えていると解説した。

Text by NewSphere 編集部