武器輸出世界3位のドイツ、中国に抜かれるも想定内? “不名誉”武器輸出大国から脱皮へ

 中国がドイツを抜いて、米露に次ぐ世界第3位の武器取引国になった。中国の伸びとともに、ドイツの消極姿勢の影響もあるようだ。2013年12月から、メルケル首相率いるキリスト教民主同盟(CDU)は、ガブリエル氏率いる社会民主党との大連立政権を誕生させた。武器輸出を管轄する経済相にガブリエル氏が就任してから、ドイツの輸出に陰りが見え始めたという(スペインのエル・ムンド紙)。

◆武器生産業者に生産品目の変更を促す
 ガブリエル経済相は、野党議員の時から、武器の輸出には反対であったという。経済相に就任するや、「ドイツが武器主要輸出国であることは不名誉なことだ」と私見を披露した。同氏が経済相を担う前までの、例えば2013年の兵器の輸出は58億5000万ユーロ(7,488億円)であった。それがガブリエル経済相になった昨年の輸出は、39億7000万ユーロ(5,082億円)まで減少した(スペインのインフォデフェンサ紙)。

 同相は昨年、ドイツの武器生産メーカーの経営者一同を経済省に集め、生産品の改革を説いたという。例えば、戦車を生産しているメーカーには、トラクターを生産するように方向転換を促したという。同相は武器輸出認可を厳しく制限することも示唆したようだ。対してメーカー側では、工場を外国に移転する考えが強いという。CDU議員の中には、ガブリエル経済相の方針に抗議する者もいるという(スペインのエル・ムンド紙)。

 武器の輸出申請は連邦安全保障委員会で審査され、ガブリエル経済相が最後の判断を下す。最近の中東情勢の不安とウクライナ紛争などから、武器の輸出申請案件は700件/年に増加している。通常は300-400件/年だ(スペインのエル・ムンド紙)。

◆ドイツの武器輸出相手国によって輸出規制内容に変化がある
 実際の武器輸出においては、輸出規制に一貫姓が欠けているのも確かだという。

 例えば、イスラエルへの武器輸出規制は緩やかである。さらに、価格の3分の1をドイツ政府が負担しているという(スペインのフライドレポート)。制裁下のイランにも武器を輸出している。同国が現在輸入しているテクノロジーの30%はドイツに依存している(スペインのプブリコ紙/スペインのインフォデフェンサ軍事情報紙)。クエートやエジプトにも武器の輸出許可を出している。

 対して、サウジアラビアには厳しい姿勢で臨んでいる。自由党との連立政権時には、イランからの防衛の必要性を理由に武器を規制なく輸出していた。しかしガブリエル経済相就任後、1月に同国への武器輸出は停止された。理由は、サウジアラビアが中東でジハード主義者に武器を提供しているからだという。2月には戦闘シミュレーターシステムなど一部武器の輸出が認可された。

 ヨーロッパでは、財政問題で対立するギリシャが最上の顧客だ(英ガーディアン紙)。

◆武器共同生産への影響は
 しかし、現在実施されている武器輸出規制にも弊害がある、と指摘しているのは軍事専門家のブロズカ氏だ。ドイツDWのインタビューに答えて、EUでの軍事産業は武器のパーツは自国だけの消費ではなく、他のEUメンバー国とも共同生産という場合が多くなっている。そのために自国で武器の生産が衰えると、EUの他のメンバー国から共同生産の提案もなくなり、必要な武器を自国生産ではなく、他国から購入せねばならなくなる可能性が出て来ると指摘している(スペインのインフォデフェンサ紙)。

Text by NewSphere 編集部