韓国の“あいまい外交”に米中限界か? ミサイル防衛配備めぐり選択迫る
韓国国内に配備が予想されている、米軍の防衛システム「高高度ミサイル防衛(THAAD)」に関して、アメリカと中国がお互いを牽制する発言を繰り返している。THAADは、敵の弾道ミサイルを、発射後の早い段階で探知し、空中で迎撃するように設計されたシステムだ。
ダニエル・ラッセル米国務次官補は17日、ソウルで趙太庸(チョ・テヨン)第1次官と会談。前日には、劉建超中国外務次官補が、李京秀(イ・ギョンス)外交部次官補と会談を持った。どちらも、会談後、THAADに関連した発言をしている。
◆アメリカは北朝鮮への抑止力、中国は自国防衛に支障と
劉氏は16日、韓国と「とても率直で自由な話し合い」を持った、と話した。また、「中国の関心と懸念を尊重してくれるように望む」と米軍の防衛システムを導入しないよう求めた。ニューヨーク・タイムズ紙(NYT)は、この発言について、中国が経済的影響力を使って、米政府から韓国を引き離しにかかっているサインだと広く受け取られた、と報じている。
一方、ラッセル氏は、「同盟関係の国が防衛協力に関して、どのような対策をいつ取るか」は、その国自身が決めることだとしながらも、米軍は、「北朝鮮の脅威からアメリカ国民と同盟国を守るための「防衛システムを考慮する責任」がある(NYT)と述べた。
アメリカ側は、THAAD配備について、狙いは北朝鮮の脅威に対しての限定的なものだと説明している。しかし、中国は、システムが中国国内の軍備をもレーダーで探知し、戦略的抑止力を危うくすると懸念している(NYT)。
中央日報は、このような状況について、ソウルが米中外交の戦場になっている、と報じている。また最近の米中の動きは、韓国に「ラブコール」を送り疲れた米中が攻勢的な態度に転換しているためだ、との専門家の分析を取り上げた。
米軍は先週、韓国のどの場所がシステム配備に適しているかを、「非公式に」調査したことを初めて認めた(NYT)。ただ、アメリカ、韓国ともに、配備についての実際的な話し合いは、まだ行われていないとしている(露メディア「スプートニク」)。
◆決めるのは韓国自身
韓国国防部のキム・ミンソク報道官は、「隣国は、韓国に米国のTHAADシステムを配備する可能性について、意見があるかもしれない」と中国について述べ、「しかし、だからといって、我が国の防衛方針に口を出すべきではない」(NYT)と韓国が決める問題だと釘を刺した。
韓国は朝鮮戦争の後、いまだに、2万8500人の米軍兵士を常駐させている。韓国は、アメリカを最も重要な同盟国だと考えている、とNYTは歴史的に同盟関係を報じている。しかしながら、韓国は、中国への経済的依存が強まっている。このため、米中それぞれとの関係についてバランスを注意深く保つことが必要になっていると同紙は続けた。
中央日報では、峨山政策研究院のボン・ヨンシク研究委員が、「韓国の戦略的あいまい性は戦略的な価値を高めるよりも、双方に不安と不信を招いた側面がある」と、現在の対外政策を批判した。そして、「米中の圧力の強度を見ると、戦略的あいまい性を捨てて選択する時期が迫っているという意味と読み取ることができる」(中央日報)と韓国政府に明確な対応を求めている。
◆中国、ソフトパワーで日米に対抗
スプートニクは、「ソフトパワー:中国は韓国にTHAADの配備を断り、AIIBに参加するよう求めた」、と題した記事を掲載している。アジアインフラ投資銀行 (AIIB)とは、中国が2014年に計画を発表した、アジア地域のインフラ整備支援を目的とした国際金融機関だ。2015年の設立を予定している。
米中関係は、アメリカの東アジアへのTHAAD配備の決断だけでなく、中国のAIIB参加を求める姿勢にも影響している、と同メディアは指摘。AIIBについては、アメリカと日本が主導しているアジア開発銀行(ADB)の影響力に対抗しようとしているのだ、と韓国メディアの見方を伝えている。
劉氏は、李外交部次官補との会談で、「AIIBの発展について説明した。韓国が創立メンバーに加わってくれるよう期待を伝えた」(スプートニク)と述べた。