中国、「自分の庭」南沙諸島の埋め立て推進 ベトナム・米国らの批判も一蹴

 各国が領有権を争う南シナ海の南沙諸島で、中国が大規模な埋め立てを行い、人工島を建設していることが問題となっている。フィリピン軍の調査によると、長さ3kmの滑走路状の土地の造成など、計7ヶ所で1平方km近く(東京ディズニーランドの約2倍)を埋め立てたという(NHK)。

 南沙諸島をめぐる、中国と東南アジア諸国の対立が懸念されている。

◆二面外交の手腕を見せる中国
 中国は、南沙諸島への埋め立ては正当な行為だと主張している。王毅外相は8日、下記のように語った。建設は誰かを標的にしているわけでも、誰かに影響を与えるわけでもない。「自分の庭に施設を立てているだけ」なので他国の批判は受け入れない。中国は「合法かつ正当な」行為を行う権利を有する(ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙)。

 一方、近隣諸国との関係改善のために、道路やパイプラインなどのインフラ整備に巨額の投資をする計画も明らかにした。

 対して、ベトナムは先週、中国の埋め立て作業について正式に抗議した(WSJ)。米国も数度にわたり、建設工事を非難しているという。しかし今のところ効果はないようだ。

◆インドネシアも巻き込まれる可能性
 中国が領有権を主張する領域は南シナ海のほぼ全てに及び、マレーシア、ベトナム、ブルネイ、台湾、フィリピンの主張領域と重なる。さらに、インドネシアが巻き込まれる可能性を指摘する識者もいる。Ristian Atriandi Supriyanto氏(シンガポールの南洋理工大学RSIS)が、『The National Interest Online』で論じている。

 同氏によれば、今のところインドネシアは、南シナ海の領土問題にあまり関与の姿勢を見せていない。しかし、インドネシアのナトゥナ諸島は南シナ海に面しており、その排他的経済水域(EEZ)は、中国が領有を主張する「九点破線」と重なる。実際同地域では、中国漁船による違法漁業が問題となっている。

 しかし、インドネシアは、中国をいたずらに刺激することは望んでいない。中国からの投資がインドネシアの経済戦略にとって重要だからだ。しかし、それでは「インドネシアは中国の南シナ海進出を懸念していない」という間違ったメッセージを送ってしまうだろう、と同氏は警告している。

◆インドの役割拡大で中国を牽制したいアメリカ
 南シナ海での攻勢を強める中国に対抗する措置として、アメリカはインドにも同地域での役割拡大を求めている、と『The Hindu』が伝えている。

 1月のオバマ米大統領の訪印時には、「U.S.-India Joint Strategic Vision for the Asia-Pacific and Indian Ocean Region(アジア太平洋およびインド洋地域のための米印共同戦略的ビジョン)」の調印が行われ、南シナ海の安全保障について明確に言及されていると同紙は述べる。

 さらに同紙は、太平洋艦隊司令官であるハリー・ハリス海軍大将が「南シナ海は国際水域であり、インドが活動したいと思うところで自由に活動できるべきだ。もしそれ(活動したいと思うところ)が南シナ海だとすれば、そこに行ってすればいい」と述べたことを引用している。

Text by NewSphere 編集部