ロシア、中国に高度軍事技術供与で米国に報復か ウクライナへの武器供給めぐり駆け引き
米政治アナリストであるハリー・カズィアニス氏が先月、米誌ナショナル・インタレストで、中国が南シナ海における王者になることをロシアが手助けする可能性があることを示唆した。それは米国がウクライナに兵器を供給することへの報復手段だという。
◆ロシアが中国に軍事技術を提供する可能性
同誌によると、南シナ海で暴走を続ける中国は、海上での優位性を維持するためにA2/AD戦略(接近阻止、領域拒否)の構築を進めているという。これは日本と直接関係する東シナ海にも影響が及ぶものであり、この領域において米軍とその同盟軍の進攻に対し、中国は対抗処置を強めることを意味する戦略である。ロシアは中国に戦闘機スホーイ35(Su-35)を提供するのは既に決まっているが、この戦闘機は米国のF-35よりも性能が良いと言われている。
さらに中国が弱いとされている対潜戦(ASW)の能力向上のため、ロシアのテクノロジーが提供されるという。そしてロシアからの潜水艦購入も可能性がある。ロシアの高度の軍事技術の提供によって、中国が推進しているA2/AD戦略がより高度なものに発展するというのだ。これによって、米国の南シナ海戦略がダメージを受けることは必至だという。
◆EUは米国の武器提供に反対
ウクライナへの米国からの武器の供給については、戦略アナリストのフィニアン・クビンガム氏がスペインのテルセラ・インフォルマシオン紙の中で、EUは米国主導のロシアへの経済制裁に強い疑惑を持ち始めていると指摘した。ウクライナに武器を提供するという米国の提案を前に、米国とEUの関係は悪化し始めているというのだ。ドイツとフランス、それに米国に忠実な英国でさえ、武器の供給に反対の声をあげているという。スペインのエル・パイス紙によると、英国はキエフに75人の軍隊指導員を派遣することを先月決めたが、武器の供給は否定している。
EUが武器提供に反対する理由は、それを実施すると紛争は拡大し、ロシアと直接対峙する可能性が生まれるからである。その代わりに、親ロシア派勢力と直接交渉をすべきだという意見だ。オバマ大統領も、仮にウクライナへの軍事支援をすれば、米国とEUとの関係に亀裂が生まれることは承知しているという。大統領は軍事的支援以外のあらゆる選択肢を模索しているという。
さらに同紙は、ウクライナ政府軍が分裂していることにも言及し、武器の供給はそれを食い止めることはできないと指摘した。ウクライナ軍の装備は悪く、モラルは低下し、ロシアに身柄を移している者さえいるという。そして、ウクライナ西部地方の一部では市民の軍隊への召集を止めたところもあるそうだ。そして、ウクライナ政府によって引き起こされたこの武力紛争を前に、モラルに問うべきだと訴えた記者は政府関係当局によって拘束されたという。21世紀に入った今も同郷人を殺すことなどできない、それは祖国への裏切り行為だ、と報じた記者は無期懲役の判決が下されたという。
一方で、米国防総省の軍事アドバイザーマイケル・コフマン氏が、ウクライナ軍は戦いには向かない、ウクライナに武器の提供は必要ない、必要なのは軍隊を送ることだ、と今も強硬な姿勢でいることも同紙は報じた。
◆米国はアブダビ経由でウクライナに武器提供
ウクライナ軍への信頼が薄れて行く中で、ウクライナのプリスタイコ副外相は先月CBCテレビのインタビューで、全面戦争になることを覚悟していると表明した。そして、いかなる危険性があっても、プーチンの前進は食い止めねばならない、と述べた。
その考えに添う形なのか、ポロシェンコ大統領は先月、アラブ首長国連邦のアブダビで開催された軍事展示会を訪問した。そこでアラブ首長国連邦と20にわたる項目で合意したことが世界の主要各紙で報じられた。同国のザイッド・アル・ナハン大佐と握手を交わした姿がヒスパノTV広報紙に掲載されたが、ウクライナは兵器を同国から輸入するのである。(買付けした兵器の詳細は発表されていない)しかしアラブ首長国連邦では武器は生産されていない。米国などから大量の兵器を購入して輸出するのが彼らの業務だ。ポロシェンコ大統領がアブダビを訪問した際に、米国の兵器販売のトップとも会談が持たれたという。つまり、米国はアブダビを介してウクライナに武器を供給する姿勢のようだ(ロボット・スカドール情報紙他)。
ノーベル平和賞受賞者レフ・ワレサ元ポーランド大統領は昨年9月、ウクライナへの軍事支援はNATOとロシアの核戦争を誘発する。それは第3次世界大戦を導くことになる、と指摘している(RT)。