ウクライナ紛争めぐる各勢力の思惑 強硬なアメリカと対露経済懸念のEUに溝も?

 ロシアのプーチン大統領、ウクライナのポロシェンコ大統領、ドイツのメルケル首相、フランスのオランド大統領の4首脳は先月、ウクライナ東部における停戦で合意を交わした。しかしこの停戦合意がいつまで維持されるのか、誰もが疑問視している。ロシアの政治アナリストのコリブコ氏は、親ロシア派勢力が参加しなかった協議は意味がないと断言している(仏レッド・ボルタイレ情報紙)。

◆EU・NATOめぐる各国の思惑
 ウクライナ紛争には3つの課題がある。ウクライナのEUへの加盟、NATOへの加盟、ウクライナへの武器提供である。それらをどのように解決するのか注目されている。政治ジャーナリストのアルマニアン氏がスペインのプエブロ紙に掲載した見解やその他のレポートをまとめると次のようなものになる。

 米国政府は、EU・NATOへのウクライナの加盟について強く支持している。EU委員会は、EUへのウクライナの加盟に賛成し、2020年の加盟を目安に、ウクライナにさまざまな政治、経済、社会改革を求めている。NATOについては、ウクライナは既に加盟の意思を表明しているが、EU委員会は加盟に賛成であるものの慎重な姿勢を取っている。加盟させれば、ロシアとの武力衝突の可能性がより強くなるからだ。しかし、かつてソ連邦の配下にあったポーランドとバルト三国はウクライナの加盟を強く望んでいる。

 ロシア政府は、EU・NATOへのウクライナの加盟は絶対に容認できない。ウクライナに連邦制を設け、東部地方に自治権を与えることを考えており、理想はオランダから独立したベルギーのように、東部地方を独立国家とさせることだ。またNATOについては、ウクライナがNATOに加盟しNATOの影響がロシア国境に迫ることは、ロシアにとって敗北を意味すると、プーチン大統領は受け止める可能性が強いという。その場合は、ロシアはバルト三国を攻撃する可能性がより強くなるという。

 一方で米国内には、カーター政権時のブレジンスキー安全保障議会メンバーやキッシンジャー元国務長官など、EUに対しても、ロシアに対しても門戸を平等に開くという、ウクライナの中立化を提唱している見識家もいる。キッシンジャー元国務長官は昨年、ワシントン・ポスト紙の中で、ウクライナは欧州とロシアの間の架け橋のような機能を果たすべきだ、と述べている。そして、ウクライナはロシアにとって外国ではない、ということを欧米は理解すべきだ、と助言している。

◆武器提供めぐり割れる米欧の見解
 ウクライナへの武器の供給について、オバマ大統領は慎重な立場を取っているが、タカ派議員と国防総省は既に提供に賛成している。彼らはプーチン政権を打倒して、ロシアに米国に理解を示すリーダーの誕生を望んでいるという。

 一方、EU委員会は、提供に反対している。特に、ロシアとの関係改善を望んでいるドイツは、武器をウクライナに供給するようになればロシアとの関係回復は望めなくなるため、反対の立場だ。ドイツは30億ドル(3,540億円)のロシアへの投資に損害が出ており、両国の取引にも多大の損失が生じている。プーチン大統領は、メルケル首相とオランド大統領が米国主導の経済制裁に反対するように望んでいるという。

◆提供された武器をジハード主義者に横流し?
 提供される武器について、2月のレッド・ボルタイレ情報紙は、米国のタカ派議員が望んでいる重装備兵器のウクライナへの提供は効果がないと指摘している。その理由は、ウクライナは兵器を入手すれば、それをジハード主義者やシリアに売る方に熱心であるからだという。

 また、上述紙で、NATOからの兵器の供給も、その多くが既に旧型で廃盤になったものを販売している事実がビデオで曝露されたという。同様に、ウクライナ兵士の戦闘能力の低さも指摘された。またNATOから供給された兵器の操作にも慣れていないことが問題になっているともいう。

 スペインの王立アカデミーエル•カノレポートは、ポロシェンコ大統領が連邦制の導入に賛成したことに言及し、今年末までにウクライナ東部のルガンスクとドネスクの自治法を承認する意思があるようだという。プーチン大統領もこの二つの地方が高いレベルの自治制を導入することを望んでいるという。ウクライナが経済的そして軍事的に弱体のままであれば、停戦が守られて行く可能性があるとしている。

Text by NewSphere 編集部