「逆オイルショック」で米シェール企業が苦境 一方、中国やロシアで開発進むとの期待も
昨今の原油安は「逆オイルショック」とも呼ばれ、そのマイナス面への注目度が高まってきた。特に、米国で急速に発展してきたシェールガス・オイル業界への不安は大きい。
◆米国のフラッキング採掘ノウハウ、他国での転用は困難か
シェールガス・オイル開発には、フラッキング(水圧破砕)技術の進展が影響している。現在、フラッキングによる石油・天然ガス採掘の99%は、米国とカナダで行われている。中国やロシアでも十分な埋蔵量は確認されている。BP社は、世界レベルでこの開発に取り組む姿勢を強めており、米CNBCもその可能性を後押ししている。
ただ、BNPパリバのハリー・チリンギリアン戦略部長によると、米国で発展したフラッキング採掘ノウハウを、他の国が真似ることは容易ではないという。米国企業とのジョイントベンチャーによる開発であれば、軌道に乗るのも早くなる可能性がある、という(スペインのエル・エコノミスタ紙)。
◆ 原油安で小規模採油井戸に危機
一方、2008年の金融危機と同様に、米国フラッキング業界でも危機が起きると噂されている(米国のクライミット・ニューズ・ネットワーク・レポート)。
フラッキング技術進展により、米国の石油産出量は、2008年に比べて約2倍に成長した。しかし、現在の原油価格は、採算ベースの1バレル=60-100ドルに届かない。数千社におよぶ中小採掘関連企業は、資金繰りが問題になる可能性が高い。フラッキング業界が抱える負債は2000億ドルと推測されている(スペインのウルティマス・ノティシアス紙など)。
強気だった米国エネルギー情報局も、このままでは小規模な採油井戸(ストリッパー・ウェル)が減少する、と報告している。古いものは閉鎖されつつあり、10月までに24%減少すると予想されている。エネルギー関連コンサルタント企業Wood Mackenzieによると、米国には現在40万のストリッパー・ウェルが存在しており、全体で100万バレル/日は産油されているという。もし価格が1バレル=40ドル以下になれば、10-20万バレル/日にまで低下するおそれがある(スペインのエコノミスタ紙)。
◆世界でフラッキング開発は進むか
世界の石油需要は、2035年頃には、41%増えると見込まれている。増加分の95%は新興国からの需要で、中国とインドが先頭に立つ(スペインのエコノミスタ紙)。
ロシアでは1-2年後に原油価格は安定すると見ており、その時点からフラッキング開発を進めるプランを描いている。スペインのエネルギー上級研究協会(IESA)のイゴール・エルナンデス部長は、今年半ばから後半にかけて石油価格の見直しが開始される、と予想している(スペインのウルティマス・ノティシアス紙)。
昨年の6月から石油価格は60%下落しているが、価格が80ドルあたりに回復した時点で、可能性ある国でフラッキング開発の検討が開始されることになるという。2035年頃には米国とカナダのフラッキングによる採掘の比率が70%まで下がり、他の国でもフラッキングが行なわれていることになると予想されている。
◆ 環境汚染の問題
フラッキング開発で解決せねばならない課題として環境汚染問題がある。フラッキングを許可していない所もある。米国でも10の州でフラッキング開発が禁止されている。フラッキングに使われる600の化学物質の中で75%は有害だ、とマサチューセッツ医学協会は見解を出しているという(メキシコのエル・オリソンテ紙)。