米キューバ国交正常化で経済活性化期待:通信、観光、エネルギーなど

 12月、米国とキューバの国交正常化交渉開始が確認された。約半世紀の空白が埋まることになる。その背景と米国の狙いについて、スペイン語メディアはどう報じているか。

◆キューバの社会主義体制は限界か
 背景にはキューバの変化がある。スペインの元駐キューバ大使カルロス・アロンソ・サルディバル氏の分析をみてみよう(外交専門誌『Politica Exterior』)。

 人口1200万人のキューバでは、600万人が社会保障金を貰って生活している。400万人が国家公務員で僅かの収入を得ている。多くの物資が国から支給されている。そのための支出は予算の68%を占める。同氏は、生産性向上が困難という問題点を指摘する。

 さらに、大学卒業後の進路も問題だ。100万人の学生が上級学校の単位を取得し、50万人が大学生である。しかし、彼等を雇う組織が存在しない。キューバを去る者は毎年40万人(米国へは20万人)を超える。

 遅まきながら進む改革の成果としては、50万人の自営業者が誕生した。外国からの投資も可能になった。野球選手などは、日米をはじめ、外国に出て大金を稼げるようにもなった(年俸の20%を政府が徴収)。ここから生じる国内の生活格差が、社会主義体制をゆるがすという。

 また、ベネズエラからの石油の安価な支給が難しくなっていることも影響している。メキシコ湾海底の石油・天然ガス資源採掘のためには、米・メキシコとの調整が必要となる。

◆ 米国企業の期待:通信、食料、観光…
 米国企業は、キューバとの商取引拡大を狙っている。例えば通信。キューバのインターネットの普及率は27%と遅れており、通信網整備が必要だ。またキューバは、食料品の60-65%を輸入に頼っている。キューバでの生産を図る米企業もいるようだ。さらに、ハンバーガーチェーンやスーパーマーケットも進出を狙っているという。

 観光解禁への期待も大きい。禁止下でも、米国人観光客は年間17万人といわれる。現金持ち込み枠の拡大、クレジットカード使用解禁などもあり、さらなる成長が見込まれる。

 一方、キューバ産葉巻の輸入拡大の可能性も高い。米国は主にニカラグアから輸入し、年間130億本の葉巻を消費している。世界最高と評価されるキューバ産葉巻の輸出が解禁されれば、さらに伸びると期待される(ペルーのマイニング・プレス紙他)。

◆ キューバの未来の政治・経済体制は
 キューバは現在の社会主義経済体制を維持するのか、それとも営利追求への門戸を積極的に開くのか。一党独裁制から民主議会制度に移行するのか。ラウル・カストロ国家評議会議長ら指導者たちは、これらの問いに答えていかねばならない、とカルロス元大使は指摘している。

 崩壊した旧ソ連の二の舞いを避けたい指導層は、社会主義から資本主義体制に移行したベトナムに強い関心を示しているとの報道もある(スペインのエル・パイス紙)。

Text by NewSphere 編集部