日本のナショナリズム、世界秩序のリスク要因? 海外紙が2015年の展望を予想

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 2015年の幕開けに、海外紙が、世界の政治や経済が今年どうなるかを考察している。その中で、日本の今後は、どのように語られただろうか。

◆今年の世界の経済の見通しは明るい?
 フィナンシャル・タイムズ(FT)紙論説は、世界の経済の今年の見通しについて、楽観するのが賢明だと語った。

 同紙によると、2014年、世界の1人当たりGDPは、購買力平価ベースで、2%近く成長した。よって、昨年末の時点で、人類は概して、その長い歴史の中で最も裕福だった。(世界GDPは今年も成長を続け)今年末にも、同じことが言えるようになりそうだ、と同紙は語る。

 昨年よりも、今年のほうが、はるかに良い実績を考えやすいという。その最も重要な根拠は、原油価格の急落だ。国際通貨基金(IMF)は、原油価格下落によって、2015年、世界経済の成長率が0.3~0.7%引き上げられる可能性があるとしているという。

 同紙は、世界の主要経済国についても、明るい見通しを語っている。日本については、(日銀による)異次元の積極的な金融緩和と、安倍首相の選挙での勝利の組み合わせは、日本の景気回復をきっと補強するだろう、とした。

◆昨年はアメリカだけが経済が好調だった?
 ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙は、株式や債券の投資という観点から、昨年来、アメリカ一強の状況が続いていることを伝える。現在、投資家が直面しているのは、改善したアメリカ経済と、それ以外ほぼすべての場所での弱い経済、という二分された状況だという。

 昨年、日本が再び景気後退に陥ったことも触れられている。しかし、日銀の積極的な金融緩和の第2弾に励まされて、日経平均株価は7.1%上昇したとも伝えている。

 多くの投資家は、今年も、この二分された状況が続くだろうと考えている。しかし今年は、アメリカ以外のいくつかの国にとって事態が好転する、と予測する投資家もいるという。

◆今年は世界で大規模な金融緩和が実施される? 投資は活性化するか
 資産運用会社ニューバーガー・バーマンのマルチ・アセット部門の最高投資責任者エリック・クヌーゼン氏は、昨年、世界の経済で主要な問題となった、低金利、平均以下の成長率、低いインフレ率が、今年にも持ち越されるだろうと、WSJ紙に語っている。

 そういった状況では、各中央銀行の動きが、重要な役割を果たし続けるという。日銀がすでに発表している金融緩和策、欧州中央銀行が発表すると予想されている追加緩和、中国の中央銀行・中国人民銀行が打ち出す可能性のある金融緩和策とで、世界の金融緩和の規模は、「2014年に経験したところよりもさらに大規模」になる可能性がある、とクヌーゼン氏は語っている。

 そういった状況では、株式や社債といった(国債よりも)リスクの高い投資にとって恩恵があるだろう、とクヌーゼン氏は考えているという。これは例えば、株式市場に資金が流れ込み、(日本などで)より一層の株高が期待できる、といったことを指すと思われる。

◆日本のナショナリズムは世界のリスク要因?
 インターナショナル・ニューヨーク・タイムズ紙に掲載され、ニューヨーク・タイムズ紙ウェブサイトにも掲載された記事は、新しい年を迎えた世界に、過去からの問題が山積していることを伝える。その口ぶりは悲観的なほどで、FT紙とは対照をなしている。

 世界各地でのさまざまな問題を挙げていく中で、日本については、中国と並べて、ナショナリズムが高まりつつあり、間抜けな風刺映画に対して憤慨する北朝鮮よりも、なお危険かもしれない、と語っている。

 記事は、米外交問題評議会のリチャード・ハース会長が、同会の発行する『フォーリン・アフェアーズ』で語ったことを引用しつつ、第2次世界大戦後に築き上げられた世界秩序が、さまざまな場所で崩壊しつつあると語る。

 ロシアは、クリミア半島とウクライナ東部で、ソビエト後の秩序を崩そうとしている。それと並べて、われわれが知っていたような世界への、修正主義の挑戦者には、ロシア、中国のような独裁政治の専制国家、つむじ曲がりの北朝鮮、もう一つのナショナリストの日本も含まれている、と記事は語っている。

Text by NewSphere 編集部