韓国、対日関係改善の意志見えず…「ゴールポストが動く」協議への不満、日本識者語る
歴史認識問題や竹島問題で悪化している日韓関係に、改善の兆しは見られない。14日の衆院選が与党の大勝に終わったことで、韓国ではさらに反日感情が高まっているという報道も見られる。
そんな中、元外務省事務次官の野上義二氏が、日本側のスタンスについて、韓国・中央日報のインタビューに答えている。野上氏は、慰安婦問題について、「日本が韓国に抱く強い不満は『ゴールポストが動く』ということだ」などと語っている。
また、ニューヨーク・タイムズ紙(NYT)などの海外紙も、日本と韓国で起きている憲法9条のノーベル平和賞推薦運動など、日韓の軋轢を象徴する動きを報じている。
◆官邸は“補償費”の用意はしている
中央日報の記事は、朴振元・元韓国外交通商統一委員長(現韓国外国語大学客員教授)が、 野上元事務次官に質問をぶつける形でまとめられている。同紙は、野上氏を「保守論客」と紹介している。
朴氏はまず、先の選挙結果を受け、「安倍政権の圧勝で慰安婦問題は解決する余地があるのか」と質問。野上氏は、「日韓国交正常化50周年となる来年中に決着をつけなければならない」と答えた。しかし、「問題の核心は、日本がどこまで誠意を見せれば韓国側が受け入れるのかというボトムライン(最低基準)が見えないことだ。マキシマムライン(最高基準)を韓国が要求すれば日本は受け入れることができない」とも述べた。
これに対して、朴氏は「韓国の立場では日本が先にカードを出すべきだと考える」と応酬し、民主党時代の野田政権が2012年に出した「佐々江案」(▼駐韓日本大使の元慰安婦謝罪訪問▼被害者への首相からの手紙▼日本政府予算で元慰安婦に金銭支給)は実現可能か?とぶつけた。
野上氏は「野田政権時代のことは分からない」としながら、「日本政府の資金」の部分は可能だと返答。首相官邸は、“賠償費”ではなく“補償費”を用意していると明かした。ただし、それでは「挺身隊対策協(慰安婦問題に取り組む韓国市民団体)側は『ノー』と言うだろう。佐々江案で整理されるようなら、その時に整理されただろう」とし、「日本が韓国に抱く強い不満は『ゴールポストが動く』ということだ」とも答えた。
◆日韓の軍事協力はありえない
話題は憲法改正や「日本の軍事力拡充への懸念」にも広がった。野上氏は、憲法改正は自民党が単独で改憲発議に必要な3分の2以上の過半数を両院で取れていないため、「物理的に不可能」と断言。日本の軍事力については「日本の国防費はGDPの0.94%にすぎない。日本の財政上、増やす余裕はない」と語った。
米軍紙『Stars and Stripes』(星条旗新聞)も、主にアメリカを絡めた安全保障の観点から、日韓関係を俯瞰する記事を掲載している。そして、ここでも日韓の識者がそれぞれ見解を寄せている。
静岡大学の伊豆見元教授は、韓国は、対北朝鮮の防衛では「米軍との訓練にしか興味がない。まして対中国では、どことも訓練をしたくない」と発言。日韓の軍事協力は韓国の国民感情的にありえないとの見解を示した。また、韓国の急速な発展と日本の後退により、両国は同レベルになり、「今日の日本が気前よく出せるものはなく、韓国はもう日本は必要ないと思っている」と、日韓関係全体を語っている。
一方、韓国のシンクタンクの研究者、ボン・ヨンシク氏は、「韓国は盲目ではない」とし、最大の貿易相手国の中国ばかりではなく、日米を含めた関係を対等に見ていると主張。「韓国の目標は、できるだけ多くの友人を作ることだ。特定の国を上に置いているわけではない」と語っている。
◆韓国人の日本“支援”を「極めて異例」とNYT
最新の日韓関係絡みのニュースも届いている。韓国の元大統領、国会議員など「著名人によるグループ」は18日、憲法9条をノーベル平和賞に推薦する日本の市民運動を支援すると発表した。これを報じたNYTの記事によれば、韓国のグループは、同国内の教会・寺院、web上で署名活動を行うという。同グループは、「運動は安倍首相の“軍拡の野望”や国際社会に向けた強力なメッセージになる」とする声明文を発表した。
NYTは、「韓国人は、日本に対して深い恨みとライバル意識を持ち、普段は日本人ノーベル賞受賞者が22人いるのに対し、韓国人は1人だということを嘆いている。そのため、これは極めて異例なキャンペーンだ」と記している。