カタールW杯、4000名の出稼ぎ労働者が犠牲となる可能性 慰霊塔の建設計画も
2022年W杯開催地のカタールでは、スタジアム建設やインフラ整備のため、アジアから多くの移民が出稼ぎにきている。国際労働組合総連合(ITUC) が3月に公表した報告書によると、1200名の出稼ぎ労働者が苛酷な労働を強いられ、亡くなったという。専門家は、2022年の開催までに4000名が犠牲者になると指摘している。
メキシコのニューズネット•デジタル紙によると、2010年の南アと2014年のブラジルのW杯建設現場での死者は9名であり、カタールの苛酷さが際立つ。
犠牲者の慰霊のため、塔の建設を要請する動きもある。
◆ネパールなどから140万人が出稼ぎに
カタールでは、現在140万人の出稼ぎ労働者が働いているとされている。 ネパール、インド、バングラデシュ、パキスタン、スリランカ、タイなど、アジア諸国出身者が大半である。中でもネパール人とインド人が多く、死者も多い。今年7月までの5年間で、672名のネパール人が死亡したという。
労働環境は苛酷で、摂氏55度の炎天下で、10-14時間働かされる。ヘルメットの支給がないことも往々にある。死因の多くは、心臓発作や建設現場での事故によるものである。労働ビザも雇用主に依存している為に、自由に職場の移動もできない状況だ(メキシコのニューズネット•デジタル紙)。
英ガーディアン紙は、ネパールの過疎村に住むモクタン家の例を紹介している。父親は175,000ルピー(約19万円)を借りて、23歳の息子のカタールまでの旅費と仲介人への費用に充てた。しかし彼は亡くなり、借りた借金の返済は出来なくなった。一家は、借金の担保である妹二人(14才と16才)が、買春宿で働くよう強要される可能性を恐れている。同紙は、こうした悲劇が他にも多数あると報じている。
◆慰霊塔の建設プラン
死亡した労働者の調査などをしている人権尊重機関のプレバシ•ネパール共同委員会は、カタール政府と世界サッカー連盟(FIFA)に、死者を奉る塔の建設を要請している(ガーディアン紙)。
その設計プランは既に完成しており、Qatar World Cup Memorialという名だ。死者一人につき一つのコンクリートブロックを、八角形となるように積み上げる。もし予測通り4000名の死者が出てしまうと、この塔は1500メートルの高さにもなる(スペインのデザインブーム•デジタル情報紙)。
しかし、W杯に2000億ドルを予算として組んでいるカタール政府にとっては、この慰霊塔の建設費などは資金的に問題にはならないだろう。
◆1日に1人死亡か
1日1人の割合で出稼ぎ労働者が死亡しているとされているカタールだが、それでも入国する労働者は絶えない。ITUCは、これからさらに50%増加すると予測している(スペインのABC紙)。
国際世論とFIFAからの圧力から、カタール政府は労働条件の改善をすると約束し、労働ビザも緩和化するとしている。しかし、それは雇用主次第だ。現場で必死で働く労働者に完全に適用されるかは、疑問が残る。