日本は軍事的に“自立”すべき:米識者主張 真珠湾の日に日米関係を考察
ハワイ時間の12月7日は、日本軍による真珠湾攻撃が行われた日だ。アメリカでは、多数の犠牲者を出し、第2次世界大戦参戦の端緒となった「忘れてはならない日」として、広く国民に知れ渡っている。
73周年となった今年も、多くの米メディアが“パール・ハーバー”を振り返る論説やコラムを掲載している。その中には、アメリカで一般的とされる歴史観を批判したり、日本側の見方を分析したものも。これからの日米関係に思いを馳せたコラムも見受けられた。
◆要因は「石油」だけではない
不偏不党を謳うオピニオンサイト、『People’s Pundit Daily』は、“パール・ハーバーの真実”に目を向けるべきだとする社説を掲載した。それによれば、最近米国内では、「日本は(アメリカの禁輸措置による)石油不足のために真珠湾攻撃に追い込まれた」という見解が目立つという。そして、同メディアはそれを、当時の“真実”のごく一部しか捉えていない「捏造すれすれの主張だ」と批判する。
筆者のリチャード・D・バリス記者によれば、「石油」にこだわる論客のほとんどは「左翼」や「民主党支持者の“穏健派”」で、その理由は、現在の彼らの大きな敵が“石油メジャー”だからだという。そして、自分たちのイデオロギーの主張や利害に都合のいいように73年前の出来事を現在に当てはめ、“石油利権”を悪者にしているだけだと、している。
とはいえ、社説は広い意味でのアメリカによる謀略説は支持しているようだ。
バリス記者は、「アメリカの参戦は、真珠湾攻撃に参加した日本のパイロットが空母を飛び立つずっと前から計画されていた」と記す。そして、当時のフランクリン・ルーズベルト大統領は、第一次世界大戦参戦を決めた同じ民主党出身のウィルソン大統領同様、石油に限らず、あらゆる利権を手中に収めるため、欧州とアジアの両方で参戦の機会を伺っていたと指摘する。
また、大義名分となった「自由と民主主義の防衛」も、実際には戦後の「彼ら自身の自由」を守ることを意味した、とも皮肉っている。
◆日本人の“パール・ハーバー観”は靖国神社に?
米ケンタッキー州のローカルメディア、『Kentucky.com』は、日本側の“パール・ハーバー”の見方を探った東京在住記者のレポートを載せている。記事は、日本では、アメリカのように12月7日が記念日として振り返られることはほとんどなく、真珠湾攻撃も「当時世界中で繰り広げられていた多くの戦闘の一つ」としてしか扱われていないと記している。
そして、日本の学校では“パール・ハーバー”の詳細を教えることはないとも主張。インタビューした日本人は皆、一人の女子大生が「当時の政府には反対した人もいた、ということだけは習った記憶がある」と答えたほかは、真珠湾攻撃のことを良く知らないか、話したがらなかったとしている。
しかし、記者は、日本人の“パール・ハーバー観”を靖国神社で発見したと主張。境内にある戦史資料館『遊就館』のパネル展示を読み解くと、「ホワイトハウスの陰謀で真珠湾攻撃を行うように陥れられた」というのが、「日本人の主張」だとはっきりと分かるとしている。また、多くの日本人が、当時の軍部すらもアメリカとの全面戦争に勝てるとは思っていなかったと考えているとも、記している。
◆岐路に立つ日米関係
一方、国際政治学者・歴史学者のジェレミ・スーリー氏は、『ヒューストン・クロニクル』紙に寄稿したコラムで、記念日に絡めて今後の日米関係を展望している。同氏は、中国やインド、ベトナムの台頭に反比例するように日本の力が衰えていることを踏まえたうえで、日米の良好な関係は今後も変わらないが、お互いの依存度は薄まり、多国間関係がより重要になってくるとしている。
スーリー氏は、戦後70年の日米関係は、経済的、政治的、そして安全保障面でも「非常に近いものだった」と記す。しかし、今、それが岐路に立っていると見ている。例えば、日米安全保障条約に支えられた「特別な関係」は今後、もっと緩いものになり、お互いの「自立」と「妥協」が求められると指摘。近年の日本が「軍事的積極性」を増しているのは、「日本人はそれを分かっているからだ」としている。
同氏は、ビジネスの面でも日米間の交渉は「厳しさを増す」と予想する。しかし、こうした変化は決して悪いものではなく、むしろ「世界のビジネスと民主主義にとって、良いことであるはずだ」と結んでいる。