習主席、平和外交を強調・武力脅迫に反対…日米などへの配慮か、余裕のあらわれか?
28~29日に北京で開催された、「中国共産党中央外事工作会議」(外交問題に関する党の最高レベルの会議)において、習近平国家主席が外交方針について演説した。この演説では、これまでとは異なる“柔らかい”トーンが用いられたという。中国の強硬な外交に変化はあるのか、海外各メディアが分析している。
◆外交レトリック
中国国営新華社通信の報道によると、習主席は周辺諸国との外交に関して「親、誠、恵、容」という理念を改めて強調した。これは、「周辺国と親しく付き合い、誠意を尽くし、互恵原則に基づき、広く包容する」という意味だ。ただ、フィナンシャル・タイムズ紙(以下FT紙)は、このようなレトリックは中国外交の常套手段であると報じた。
習主席はまた、「国家間の相違と議論について、対話と協議による平和的な解決を促進し、武力による脅しの恣意的な使用に反対する」とも述べている。ロイターは、中国が、強硬な外交と軍事的アプローチに対する他国の懸念に対処しようとしている、とみている。
◆緊張緩和はどこまで可能か
FT紙は背景として、日中首脳会談の実現や米中関係の改善を挙げている。中国は今のところ、日米との対立を望んではいない、とゲリー・カーティス氏(コロンビア大学教授・政治学)はFT紙に語っている。
ただ、習主席は就任以来、領土問題や国内の騒乱に対し、“独断的な”リーダーシップを発揮してきた。そうした姿勢に対する党員・国民の期待も高い。これは、習主席の緊張緩和の努力を困難にする、と分析されている(FT)。匿名の中国共産党員が、日本を脆弱な「豆腐の欠片」に例え、島国は大陸の大国の陰で暮らす運命だと述べたことも報じられている。
一方、領土問題に関しては、習主席は「領土主権と海洋権益、国の統一」を「断固として守る」と述べている。また、「我々の最大の好機は中国の安定した開発と力の成長にかかっている」とも発言している。
ロイターは、中国が南シナ海のほぼ全域で東南アジア諸国と領有権を主張し合っていることを挙げる。また、近々では、スプラトリー諸島(南沙諸島)における「開拓」中止を要請したアメリカの「無責任な所見」に反撃したとも報じている。
◆「中国の夢」とシルクロード
また、この演説で習主席は「中国の夢」について述べている。新華社によれば、中国の夢とは「平和、発展、協力、ウィンウィンの夢」であり、理解と支持を世界各国に求めている。その一環として「シルクロード経済帯」の整備に取り組むとも述べている。
古の交易路であったシルクロードを復興することで、経済のみならず、政治や文化にも中国の影響をもたらそうという構想であるとブルームバーグは述べる。その道筋の大きな部分を擁するカザフスタンでは、経済的恩恵を受けられるシルクロード構想を政治指導者たちは支持する。しかし、国民の間では反中感情が広がっており、中国の力が強大になりすぎることへの懸念もあって、簡単には受け入れられないだろうとも報じている。