韓国、米中“二股外交”の危機? 米軍ミサイル防衛システム(THAAD)配備に中国反対
中国の邱国洪駐韓大使は26日、米国の高高度防衛ミサイルシステム(THAAD)の韓国配置に対し、明確に反対を表明した。
邱大使は、韓国国会の南北関係発展特別委員会において、「THAAD配備は中国の安全に有害」で、「韓中関係にも大きく悪影響を及ぼす」と述べた。THAADが韓中関係に及ぼす影響について、中国の要人が言及したのは初めて、と中央日報は指摘する。
在韓米軍司令部は6月、THAADの在韓米軍配置を米国防部に提案したことを明らかにした。ただ、韓国と米国は、配備に関する公式協議をしていない。韓国は中国等に配慮し、明確な返答を避けていた。
◆アメリカと中国の板挟み
アメリカと中国がお互いに勢力を拡大しようとする中、韓国の綱渡り外交は、いよいよ困難を増している、とウォール・ストリート・ジャーナル紙は指摘している。
昨年の対中輸出額が輸出全体(5600億ドル)の4分の1を占める韓国にとって、中国は最も重要な経済パートナーである。今年1-9月だけでも、韓国企業の対中投資は32億ドル(約3770億円)に上った。
韓中の経済関係は、中国の指導者が圧力手段として利用できるほど密接である。しかし、安全保障分野に関しては、長年の同盟国であるアメリカとの関係を弱めることはできない、と韓国の政府高官は認めている。
昨年、中国が東シナ海に防空識別圏を設定したことに対抗し、韓国側も設定区域を拡大した。3月には、中国が領土問題で対立するフィリピンに対し、韓国はFA50戦闘機を売却している。安全保障分野では、韓国が中国を刺激することは避けられない、と同紙は指摘する。
◆割れる世論
THAAD設置に関しては、韓国国内でも大きく意見が割れている。中国等の反発を受け、韓国だけで決定できる問題ではないため、アメリカ、中国およびロシアとの間の折衝と妥協が必要と中央日報は指摘する。また、THAAD配備には相当な財政負担が要求されるとの懸念もある。
一方、韓国政府は安全保障の観点から、THAAD配備を決定すべきという有識者もいる、と『Korea Herald』は伝えている。北朝鮮が3月に日本海上で発射角度を高めてノドンミサイル2発を試験発射したことから、将来的には北朝鮮による核攻撃も懸念されている。韓民求国防庁長官は「THAAD設置は韓国の安全と防衛を確保するうえで役立つ」と述べた、と同紙は報道している。
中国と米国に対し、“二股外交”を繰り広げてきた韓国にとって、難しい判断が迫られている状況といえる。