“日本とドイツ、お互いから学べ” 日本企業はリスク取って野心的に、と海外メディア

 日本とドイツは、ともに少子高齢化という問題を抱えている。EU全体が不振にあえぐ中でも、ドイツ経済は長い間堅調を保っていたが、ここに来て、ドイツも景気後退の崖っぷちにひんしている。そんな中、日本とドイツを比較する記事が、複数の海外メディアで見られた。

◆ドイツの前途に日本の「失われたx年」と同じ未来が待っている?
 米ニュースサイト「ビジネス・インサイダー」は、ドイツが、日本経済を25年にわたって痛めつけたのと同じ苦境にはまりそうだ、と警告する。

 欧州連合(EU)統計局の14日の発表によると、ドイツの7-9月期の実質GDP(速報値)は前期比0.1%のプラスだった。4-6月期はマイナス0.2%で、(2四半期連続でのマイナスという)景気後退は辛くも避けた格好だ。「ビジネス・インサイダー」によると、10月のインフレ率は0.8%だったという。

 その一方で、ドイツの来年度予算は均衡予算となることが決まった。ドイツの政治家(と有権者)は、財政面からの景気刺激策を実施することにまったく乗り気でない、と記事は語る。かなりの人口高齢化、低いインフレ率、低い経済成長率、そしてそのどれについても、さほど不安を感じているようには見えない政治情勢――これはまさに、「失われた10年(あるいは20年)」の間に日本に起こったことだ、と記事は述べている。

◆日本と同じ轍を踏まないためにドイツができることとは?
 ドイツ経済を落ち込みから守るための処方箋として、大和証券キャピタル・マーケッツのChris Scicluna氏とRobert Kuenzel氏が主張するところを、記事は紹介している。それは「財政による景気刺激」「さらなる公共投資」「減税」「構造改革」からなる。もしこのリストが見慣れたものに思えるなら、それはこれが日本の安倍首相のアベノミクス「3本の矢」に似ていなくもないからだ、と記事は語る。ただし、ユーロ圏の金融政策は欧州中央銀行が決定しているため、金融面での対策はこのリストに含まれていない。

 日本とドイツがともに抱えている問題は、金融緩和や財政による景気刺激策で解決できるものではない、高齢化しつつある、生産力の大きい高度経済先進国にとっては、単にそれが普通なのだ、と主張するのはもっともだ。しかしもし日本の経験がわれわれに何かを教えているとしたら、それは、試してみることに不都合はほとんどないということだ、と記事は語る。

◆日本はドイツの成功に学べ
 次に、日本がドイツを参考にすべきだ、という意見を紹介しよう。ブルームバーグのオピニオンサイト「ブルームバーグ・ビュー」のコラムニスト、ウィリアム・ペセック氏の論評だ。

 「メイド・イン・ジャーマニー」というブランドは、過去15年間以上ずっと栄えている。さらにドイツは、高い労働コスト、割高なユーロ、EU内でのいくつもの財政危機にも関わらず、激烈な国際競争の中で繁栄している。その秘密は、日本企業には思いも寄らないと見える方法で、ドイツ企業が順応し、革新を生み出していることだ、とペセック氏は語る。

 氏によると、ドイツ企業の成功は、優れたデザイン力、生産力の拡大および高級品市場への移行に一心に集中したこと、研究開発に積極的に投資したことと、古風なリスク・テイキングのおかげだという。

 対して、日本企業の経営陣は、インターネット時代の消費者が好む革新的技術よりも、既存の商品や製法を少しずつ改善することを好む。バント狙いばかりで、ホームランを狙おうとしていない。日本はいま一度、もっと野心的に考えるようになる必要がある、と氏は語る。

◆勢いのいい中小企業支援が大事?
 また、中小企業がドイツ経済の主力を成している、と氏は述べる。それらの企業は、値段以上に、品質と創意工夫で勝負している。日本も、本当に革新を生み出し、雇用を作り、考え方を変化させるであろう従業員数300人以下の新興企業を支援する必要がある、と氏は主張する(下請け企業は氏の念頭にはないようだ)。そして、政府が支援するべき対象として、ロボティクスの革新者のファナック、スマートフォン・アプリのクリエーターのコロプラ、自動制御機器メーカーのキーエンス、バイオ医薬品会社のペプチドリームといった企業を挙げている。

 ドイツが輸出大国として成功したのは、EU内で自由にトレードできたおかげだという。日本も、TPPだけではなく、アジアでの関係を改善し、中国を含み、可能な限り多くの2国間の自由貿易協定(FTA)合意に達することも目指していくべきである。また、外国人労働者・移民も受け入れていくべきだと、氏は提言している。

 第2次世界大戦の過去にどう取り組むかということ以上に、日本がドイツから教われるものがある。ドイツは、日本がより活気に満ちた未来を作り出す方法を教えている、と氏は語る。

Text by NewSphere 編集部