韓国裁、戦時徴用で日本企業にまた賠償命令 資産差し押さえも…緊張激化に海外から懸念

 女子勤労挺身隊として戦時中に徴用され、過酷な労働を強いられたとして、富山市の機械メーカー不二越に損害賠償を求めた韓国人女性たちとその遺族に、ソウル中央地裁は総額15億ウォン(約1億5千万円)の支払いを命じた。

◆反人道的行為への賠償義務
 地裁は、「被告が若い女学生らをだまして勤労挺身隊に志願させたり、強制徴用したりして危険な労働に従事させたことは、日本の違法な植民地支配や侵略戦争と直結した反人道的な違法行為。これにより原告が受けた苦痛を賠償する義務がある」と判決の理由を説明した(聯合ニュース)。

 法廷では、犠牲者の女性たちが故郷に戻っても性奴隷(記事ではSex Slaveと表現)と間違えられ、よりひどい差別を受けたことにも言及されたという(コリア・ヘラルド)。

◆歴史的裁定で状況が逆転
 もともと原告らは、2003年に不二越と日本政府を相手取って、富山地裁で同様の訴訟を起こしたが、「(日韓)請求権協定により韓国人個人の請求権は放棄された」という理由で敗訴。その後最高裁で、11年に請求棄却の判決が確定した(読売新聞、聯合ニュース)。

 しかし、2012年の別の訴訟で、韓国大法院(最高裁)が、個人の請求権は有効とした「歴史的裁定」を下したことで、原告たちに韓国で賠償請求を行う道が開かれたとコリア・ヘラルドは説明する。

 今回の裁判で、不二越は同じ訴訟をまた行うことはできないと主張したが、地裁は「日本の判決は強制連行そのものを違法と見なす韓国憲法の価値と真っ向から衝突する」と退けた(聯合ニュース)。また「1965年の韓日請求権協定により個人の請求権は消滅しており、民法上の消滅時効も成立している」、「韓国の裁判所に管轄権がない」とする不二越側の訴えも認めなかった(読売新聞、聯合ニュース)。

◆さらなる関係悪化の恐れも
 ニューヨーク・タイムズ紙(NYT)は、不二越は控訴する方針と報じたが、もし大法院が地裁の判決を支持し、日本企業が賠償を拒否すれば、原告は裁判所に日本企業の韓国内の資産差し押さえを求めることができると説明。そうなれば、ほぼ確実に日韓関係の緊張が高まると指摘する。

 韓国の歴史家によれば、戦時中、強制労働をさせられた韓国人は少なくとも120万人。現在も存続する約300社の日本企業がそのような労働者を徴用したと、韓国の関係者は述べる(NYT)。

 原告側の弁護士は、聯合ニュースに「2012年の韓国最高裁の判決は、3年間有効」と説明し、「つまり、2015年5月までに、他の被害者たちも急いで提訴すべきということだ」と述べたと言う(コリア・ヘラルド)。

 産経新聞は、これで戦後補償関係の裁判で賠償を命じる判決は4件目だとし、国交正常化50周年を前に、韓国側の「主観的な歴史感」によって、過去の清算のための請求権協定が「根底から揺さぶられている」と述べている。

Text by NewSphere 編集部