豪防衛相、日本に潜水艦開発協力を公式要請 地元の根強い反発にどう対処する?
オーストラリアのジョンストン国防相は16日、東京で江渡防衛相と会談し、同国海軍の新型潜水艦導入について、公式に日本に協力を要請した。これまでにも日本製の「そうりゅう」型潜水艦の購入が取り沙汰されてきたが、潜水艦に関する豪政府からの公式な協力要請はこれが初めて。地元メディアやロイターが伝えている。
◆日本からの輸入が最有力
防衛省の発表によれば、江渡防衛相は要請に対し、「日本がどのような形で協力できるか検討する」と答えたという。
オーストラリア海軍は現在、6隻の自国製コリンズ級潜水艦を保有している。これが老朽化しているため、艦の更新を計画しているが、その最有力候補が通常型潜水艦では世界最高クラスの性能を誇ると言われる日本(三菱重工・川崎重工)製のそうりゅう型だと言われている。
日本のほかにも、ドイツ、フランス、スウェーデンが自国製の潜水艦をオーストラリアに売り込んでいる。ロイターによれば、ドイツの潜水艦メーカーの幹部が今週、首都キャンベラを訪問し、オーストラリアで製造を行う提案をしたという。
◆輸入反対論にアボット首相「我軍にとってベストな選択を」
ドイツメーカーの提案の背景には、輸入に対する国内の反発がある。特に軍需産業や造船業が集まる南オーストラリア州では、雇用の喪失を招くとして反発が強い。同州には約2万7000の防衛関係の雇用があり、そのうちの3000が造船関係だという。
与野党内の反対論も強まっている。野党・労働党のショーテン党首がその代表格で、豪ABCは「いずれの海外製の潜水艦もオーストラリアの目的には合わない」という別の議員のコメントも紹介している。また、予算的に最も「お値打ち」な選択をするべきだという、中立的な意見も出ている。
複数の地元メディアは、アボット首相は先の選挙で潜水艦メーカーを訪れ、自国生産を継続する約束をしたと報じている。そのため、輸入となれば公約破りになるというのが、反対派の主張だ。同首相は16日、「将来の潜水艦に関する決定は、特定の地域や企業ではなく、我が軍にとって何がベストかという判断に則って行われなければいけない」と記者団に語った。
◆武器輸出は日本の軍事力増強に結びつく
ロイターは、日本側からすれば、潜水艦の輸出は中国に対抗するための軍事力増強戦略の一環だと指摘する。武器輸出三原則の見直しによって、潜水艦のような純国産完成品の輸出も可能になったが、その狙いの一つは、「日本の防衛産業の生産基盤を広げ、コストを下げること」だとする。輸出によって武器生産が拡大すれば国内(自衛隊)向け軍備品のコストも下がり、軍事力増強につながるというわけだ。
一方、オーストラリアはコリンズ級よりも一回り大きいそうりゅう型クラスの潜水艦の開発実績がない。ロイターは「自国生産はリスクを含み、開発の遅れや予算オーバーも心配だ」と記す。オーストラリア政府の依頼で作成された調査機関の報告によれば、設計段階だけで1000人の設計士・エンジニアを必要とし、これは同国内で供給できる人数の5倍に当たるという。
日豪両国と同盟を結ぶアメリカは、両国が同型艦を運用することに賛成しているようだ。米潜水艦隊の指揮官、スチュワート・ムンシュ提督は8月にロイターのインタビューに答え、「オーストラリアが日本製の潜水艦を運用するのを見るのが楽しみだ」などと語ったという。
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