中国を超えられるか? モディ印首相、「メイク・イン・インディア」で製造業誘致へ
インドのモディ首相が、26日から、5日間の予定でアメリカを訪れている。
モディ首相ほどの逆転を経験した世界の指導者はいないだろう、とニューヨーク・タイムズ(NYT)は評する。彼がグジャラート州首相だった2002年、同州で宗教暴動が起き、1000人以上が亡くなったとされる。これに関し、アメリカは2005年から10年近く、同首相に対するビザ発給を停止していた。
モディ首相は今回、大人気の指導者として、また中国とのバランスを取ることができる特異な戦略的パートナーとして、アメリカで大歓迎を受けた。
【野心的で、自信家、怠慢を許さない】
モディ首相は、野心的で、自信たっぷりで、どんな怠慢も許さない。彼の理想とするインドそのものだ、とNYTは評価している
モディ首相の外交手腕にも荒っぽさが顕著に表れている。先週、中国の習近平主席がインドを訪れた際も、1000億ドル規模の投資計画をちらつかせる中国側に対し、両国の紛争原因となっているカシミール国境問題について公に諭し、世界を驚かせた。
【8億人の若者のエネルギーと進取の気性を解き放て】
モディ首相の最大の目標は、8億人を数える35歳以下のインドの若者のエネルギーと進取の気性を解き放つこと、とウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)に自身が寄稿したコラムで語っている。
特に、インドを世界の製造業の生産基地にすることを目指し、「メイク・イン・インディア」を公約している。「不必要な法律を無くし、官僚的な手続きを簡素化し、透明性があり、すぐに応じる、責任感のある政府を作る」と同首相はWSJに抱負を語っている。
実際、インドが製造業で大きく後れを取っている原因として、インフラの不足、厳格な労働法、悪名高い官僚主義が指摘されている。
インドは大勢の若者がいるにもかかわらず、製造業基地としては成功していない、とフィナンシャル・タイムズ紙(FT)は指摘する。インドの製造業がGDPに占める割合は15%、世界輸出に占める割合は1.7%に過ぎない(1990年比で0.5%しか上昇していない)。一方、中国の製造業がGDPに占める割合は34%、世界輸出の11%を占めている。
【メイク・イン・インディア】
「メイク・イン・インディア」に対して懐疑的なエコノミストもいる。JPモルガンのインド担当エコノミストは、世界的な製造業の生産能力の過剰と、先進国市場の高齢化が進み需要が変化している事を指摘している。
しかし、インドの製造業に期待する声も大きい。フォルクスワーゲンは、インド市場向けに製造した車が、メキシコや南アフリカなどの後進国にも人気な事に気付いた。いまや同社が毎年インドで製造する12万台の車の半分は輸出向け、とFTは報道している。
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